遠距離早期警戒線

遠距離早期警戒線（DEWライン）

遠距離早期警戒線、通称DEWライン（Distant Early Warning Line）は、北極圏に位置するアメリカ大陸北岸に設置されたレーダー網です。このシステムは、冷戦期におけるソ連の爆撃機による攻撃からアメリカ本土を防衛することを目指して構築されました。

背景と設置理由

1950年代初頭、カナダ南部にはパインツリー線、中部には中部カナダ線というレーダー警戒網が存在していましたが、ソ連の軍事技術が進展する中、より早期に対象を捕捉する必要があると判断されました。ソ連とアメリカの最短攻撃コースが北極を通るため、そこにレーダー網を設けることになったのです。1954年から建設が開始され、レーダー網は北緯69度付近を中心に延長1万キロにわたる構造をしています。

運用と通信

この防衛網は主にカナダ空軍が運用していましたが、アメリカ空軍による担当区域も存在しました。レーダー基地は63カ所に設置され、その構成は多様でした。無人基地もあれば、数名の整備要員が常駐する基地、大型の補給・休養拠点も含まれていました。

対弾道ミサイル能力とその後の展開

DEWラインはその設計上、弾道ミサイルには対応していなかったため、大陸間弾道ミサイルの開発・実用化が進むにつれて、その戦略的価値は次第に薄れていきました。しかし、冷戦期の間は警戒機能を維持するために運用が続けられました。1985年から始まったレーダー基地の統廃合によって、基地の数は大幅に減少しましたが、機能自体は残されました。

1990年に冷戦が終結した後、アメリカ軍はDEWラインから撤退し、その運用はカナダ軍に移行しました。これに伴い、廃棄された施設に関する問題も浮上しました。

環境問題とその後の対策

1990年代になると、使われていた電子機器に含まれていたポリ塩化ビフェニル（PCB）が環境問題として注目を集めました。これらは廃棄された基地にそのまま残されており、汚染のリスクを伴う問題となっていました。これを受けて、1996年からアメリカとカナダは協力し、PCBを含む機器の回収作業を開始することとなりました。このプロジェクトにはおよそ3億ドルの資金が投じられました。

このように、DEWラインは冷戦期における重要な防衛システムであり、その後の環境問題への対応も含めて、歴史的な意義を持つものとなっています。

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