遣らずの雨 (アルバム)

EP『遣らずの雨』について

『遣らずの雨』は、2022年6月1日にSACRA MUSICからリリースされた、日本の声優兼シンガーソングライター楠木ともりの4枚目のEPです。前作の『narrow』から約7か月の時間を経ての発表であり、全曲の作詞は彼女自身が行っています。本作の大きなテーマとして掲げられているのは「雨」であり、特に梅雨の時期にリリースされることからスタッフから提案を受けて決定されたとのことです。このテーマにより、さまざまな表現が可能になると考えられました。

音楽的アプローチ

「遣らずの雨」

本作の表題曲である「遣らずの雨」について楠木は、「自分でも少し重たい印象の歌詞になった」と振り返ります。歌詞には、苦しむ人に寄り添うその苦しさが表現されています。彼女曰く、苦しみを理解することでその人に寄り添うことができるが、極限まで理解すると寄り添う側の心も痛むという非常に深いテーマが反映されています。「遣らずの雨」という言葉を調べた結果、自ら命を絶とうとしている人々を引き止めることの苦しさが浮かんだそうです。特に「かえる」という言葉をもとに発展させた表現は、帰る場所、別れ、そして死にまつわる深い哲学的な考察を生み出しました。これにより、悲痛な叫びや苦しみだけではなく、暖かさと優しさも交えられた歌詞に仕上がったとのことです。

「山荷葉」

『遣らずの雨』の制作において、楠木は以前から山荷葉という花についての構想を持っていました。和の雰囲気を持つ楽曲に仕上げたいという思いがあり、そのインスピレーションが雨をテーマにしたEPを作るきっかけになったと語っています。編曲を担当したarabesque Chocheには、構想時点からにお願いし、山荷葉から思い浮かべた情景を写真も交えて伝えたそうです。

「もうひとくち」

この楽曲では、1st EPの「眺めの空」に登場した二人の男女の物語を、女性の視点から描写しています。『眺めの空』では、女の子に振り回される男の子の様子が描かれましたが、今回はその逆の視点からの描写であり、実は不安を抱えた女の子の心情が見事に表現されています。ササノマリイが作曲を担当したこの楽曲は、元々楠木自身が作曲する予定でしたが、理想のメロディに到達できないことから、彼に依頼することとなりました。

「alive」

このEPの中で最も短い歌詞を持つ楽曲は、サビの部分での強いメッセージが特徴です。少ない言葉で重みが増し、非常にメッセージが伝わりやすい形に仕上がったと楠木は語っています。また、この歌詞は彼女が2021年12月に行ったワンマンライブ「Reunion of Sparks」での思い出を元にした内容になっているとのことです。

結論

『遣らずの雨』は、深い感情とストーリー性を持った作品であり、楠木ともりの歌詞の力強さと音楽への情熱を感じさせる作品となっています。彼女の独自の世界観が詰まったこのEPは、リスナーにとって心に響く音楽体験を提供することでしょう。

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