遣新羅使

遣新羅使：日本と新羅の外交と交流

遣新羅使は、古代日本が新羅へ派遣した外交使節団です。特に668年以降、朝鮮半島を統一した統一新羅に対する使節を指します。779年（宝亀10年）を最後に、正規の遣新羅使は途絶えました。

背景：複雑な日羅関係

4世紀には日本（倭国）が新羅を臣民としていたとする記述が「広開土王碑」に見られ、両国の交流は古くから存在しました。5世紀には、倭王が宋から「使持節都督新羅任那加羅秦韓慕韓六國諸軍事安東大將軍倭國王」の称号を与えられるなど、一定の影響力を持っていたことがうかがえます。

6世紀には伽耶の滅亡など、日羅関係は緊張感を帯びていましたが、新羅からは任那の調や高句麗使の送使などを名目とした使者が日本に派遣され、日本からも使者が新羅に派遣されていました。

遣新羅使の派遣が本格化した背景には、唐の台頭と白村江の戦いがあります。百済滅亡後、唐との緊張が高まる中で、日本と新羅は利害の一致を見出し、共同で対抗しようとする動きの中で交流が盛んになりました。白村江の戦いで両国は直接的な戦闘を避け、日本側も新羅との連携を受け入れやすかったと考えられています。日本の目的は、先進技術の導入と海外情勢の把握にあったと考えられます。

経緯：良好関係から緊張関係へ

最初の遣新羅使の帰国時には、朝廷から新羅王への厚い贈り物があり、初期の日羅関係は良好でした。新羅からの留学僧が重用され、日本の律令官制にも新羅の影響が見られます。

しかし、新羅が朝鮮半島統一を果たし、国家意識を高め、対等な関係を求める一方、日本側は新羅を従属国扱いしたことから関係が悪化しました。735年（天平7年）、新羅使が国号を「王城国」と改称したと通告したことで、朝廷は激怒し使者を追い返しました。

統一新羅時代には、遣新羅使の名称が示す通り、必ずしも日本への朝貢関係があったわけではありません。唐との関係修復、渤海の台頭なども、日羅関係に影響を与えました。736年（天平8年）の遣新羅大使阿倍継麻呂は、新羅で外交使節としての礼遇を受けられず、帰国後疫病が流行するなど、両国関係の悪化は深刻でした。

752年（天平勝宝4年）、新羅王子金泰廉を団長とする大規模な使節団が来日し、大量の金を持ち込みました。これは、国際情勢の緩和と交易の促進を目的としたものと見られています。しかし、翌年には遣唐使と新羅の使者の席次争いが発生し、新羅王への謁見も叶いませんでした。この事件は、唐の冊封体制への影響も考慮する必要がある複雑な問題です。

759年（天平宝字3年）には恵美押勝による新羅遠征計画が持ち上がりましたが、国内情勢の変化により中止されました。780年（宝亀11年）以降、正規の遣新羅使は停止され、以後は遣唐使の安否確認程度の使者しか派遣されなくなりました。

航路と文物

遣新羅使の航路は史料に乏しいですが、阿倍継麻呂大使の航海の様子は万葉集に記されており、難波の津を出発し、瀬戸内海、筑紫、壱岐、対馬を経由して新羅へ向かったことがわかります。

新羅から日本へは金銀などの金属、高級織物、珍しい動物、香料、薬物、顔料、染料、器物など様々な文物が入ってきました。朝廷は必要品を確保した後、余剰品を希望者に払い下げたと考えられています。

結論

遣新羅使は、古代日本の外交政策、日羅関係、国際情勢を理解する上で重要な歴史的事実です。複雑な政治状況の中での交流の歴史は、多様な視点からの研究が求められます。

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