遺伝率

遺伝率とは

遺伝率（いでんりつ、英: heritability）は、特定の表現型における遺伝的要因の寄与度を示す指標です。この指標は一般的に全表現型分散に対する遺伝分散の割合として定義され、また「遺伝力」とも呼ばれています。遺伝率は、特に量的遺伝学や育種学、行動遺伝学などで広く使用されています。

遺伝率の概念

遺伝率は、集団内の形質の違いを遺伝と環境からの影響に分け、遺伝によって説明可能な割合を示します。例えば、身長や体重などの量的形質が挙げられます。具体的には、ある動物の体重の遺伝率が60%であれば、選ばれた肉親から得られた子の平均体重は集団平均よりも若干重くなるという考え方に基づいています。ただし、個々の遺伝的要因がそのまま子に伝わるわけではなく、栄養や環境により影響を受けることもしばしばあります。

遺伝率と環境の関係

遺伝率は環境や集団によって異なり、環境の変動が大きい群れでは異なる値が観測されます。また、遺伝率が高いからといって、必ずしもその特性が親から子に確実に遺伝するわけではありません。具体的には、統合失調症や自閉症などの精神的特性についても、遺伝率が高い場合でも実際の子孫に症状が現れる確率は必ずしも同様ではなく、複雑な相互作用が影響しています。

遺伝率の定義

遺伝率はポリジーン遺伝による表現型値をモデル化する際に使用されます。遺伝の効果と環境の影響が組み合わさることで、表現型が現れるのです。遺伝率は全表現型分散と全遺伝分散の比で表され、具体的には以下のように計算されます。

$$H^2 = \frac{V_G}{V_P}$$

ここで、$V_P$は全表現型分散、$V_G$は全遺伝分散を示します。さらに、遺伝分散には相加的分散と非相加的分散が存在し、狭義の遺伝率は特に近親個体間の相関の指標となります。

遺伝率の推定方法

遺伝率を推定するにはいくつかの方法があります。人為選択による方法、血縁個体間の相関による方法、そして双生児法が一般的です。人為選択においては、特定の表現型を持つ親から選ばれた個体同士を交配し、その結果から遺伝率を評価します。また、双子のデータを用いることで、環境の影響を分散としてより正確に評価できます。特に一卵性双生児の相関と二卵性双生児の相関を使って、遺伝率を算出する方法が広く用いられています。

結論

遺伝率は遺伝と環境の複雑な相互作用を理解するための重要な指標であり、心理的な特性や身体的形質において多様な応用があります。特定の集団の中での遺伝的影響を理解するためには、周囲の環境や個別条件を考慮する必要があります。

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