那珂遺跡群

那珂遺跡群：福岡平野の歴史を物語る複合遺跡

那珂遺跡群は、福岡県福岡市博多区に位置する、旧石器時代から中世にかけての複合遺跡群です。那珂川と御笠川に挟まれた洪積台地上に広がり、隣接する比恵遺跡群と合わせて「比恵・那珂遺跡群」として知られています。この遺跡群は、福岡平野のほぼ中心部に位置し、その範囲は南北約2キロメートルに及びます。

遺跡の概要と特徴

那珂遺跡群は、弥生時代の環濠集落である那珂遺跡（福岡市指定史跡）や、古墳時代の那珂八幡古墳など、各時代の重要な遺構を含んでいます。発掘調査は1970年代から継続的に行われ、2022年3月時点で178次を数えます。これにより、旧石器時代から中世に至るまでの、人々の生活や文化の変遷を辿ることが可能となっています。

遺跡の範囲は広く、発掘調査報告書などによって「那珂遺跡」または「那珂遺跡群」と呼称されることがありますが、福岡市の遺跡地図情報では、二重環濠が検出された史跡指定範囲が「那珂遺跡」とされ、周辺を含む広い範囲が「那珂遺跡群」と表示されています。

各時代の様相

旧石器時代

那珂遺跡群からは、旧石器時代の黒曜石製の打製石器が出土しており、この頃から人々が活動していたことがわかります。

弥生時代

弥生時代早期には、台地端部に集落が形成され始めました。特に遺跡の南端では、板付遺跡を遡る可能性のある、日本最古級の環濠集落が見つかっています。この環濠集落は、ほぼ正円に近い二重の環濠で囲まれており、外径は約140～160メートル、外側の濠は幅5-6メートル、深さ2メートルほどです。また、朝鮮半島産の鋳造鉄斧や、巴形銅器の鋳型が出土しており、当時の交易や文化交流を示す貴重な資料となっています。

古墳時代

古墳時代には、那珂八幡古墳をはじめとする前方後円墳が築造されました。那珂八幡古墳は、撥型の前方部や三角縁神獣鏡の出土など、初期古墳の特徴を持っています。また、3世紀頃の幅7メートルの道路跡が確認され、比恵遺跡群など他の遺跡でも同様の遺構が見つかっていることから、広範囲にわたる直線道路の整備が行われていたと考えられています。

古代・中世

古代には、那珂郡の役所があったと考えられており、遺跡各地で瓦や掘立柱建物が検出されています。中世になると、井戸や屋敷などの一般村落の遺構が見られるようになり、室町時代後期には、濠を巡らせた防御的な屋敷が多くなります。

周辺遺跡との関連

那珂遺跡群は、周辺の板付遺跡や須玖遺跡群など、他の重要な遺跡と密接な関係を持っています。これらの遺跡群と合わせて、福岡平野における古代の社会や文化を理解するための重要な手がかりを提供しています。

まとめ

那珂遺跡群は、旧石器時代から中世に至るまでの長い歴史を持つ複合遺跡であり、各時代の遺構や遺物を通じて、当時の人々の生活や文化を知ることができます。特に、弥生時代の環濠集落や古墳時代の古墳群は、この地域の古代史を解明する上で重要な役割を果たしています。今後の調査研究によって、さらに新たな発見が期待されています。

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