那須宗一

那須宗一

那須宗一（なす そういち）は、1914年3月9日に生を受け、1990年9月10日にその生涯を閉じた日本の社会学者です。

彼は特に、老人社会学、社会病理学、そして犯罪社会学といった分野を専門とし、長年にわたり教育研究活動に従事しました。最終的には中央大学名誉教授の称号を得るとともに、淑徳大学学長としても教育界に貢献しました。

来歴

那須宗一は、和歌山県田辺市にて生まれました。旧制高校は大阪府立浪速高等学校に学び、1934年に卒業。その後、東京帝国大学文学部社会学科に進学し、1937年に同課程を修了しました。

大学卒業後、研究者としての道を歩み始め、1951年には東洋大学文学部の助教授に就任しました。わずか2年後の1953年には、中央大学文学部の教授に転じ、以降、同大学を拠点に研究と教育に尽力することとなります。1958年にも再び中央大学文学部教授として記載されており、これは研究室の変更などがあった可能性が考えられます。

学内での活動に加え、社会に対する貢献も多岐にわたりました。1966年には経済企画庁の国民生活審議会委員を務め、国の政策立案にも関与しました。1972年には東京都老人総合研究所の副所長に就任し、その専門分野である老人社会学の実践的な研究にも携わりました。また、同学会における活動も活発であり、日本老年学会の理事や、日本老年社会科学会の会長といった要職を歴任し、関連分野の発展に貢献しました。

1984年、長年勤め上げた中央大学を定年退職し、同大学より名誉教授の称号を授与されました。同年には淑徳大学の学長に就任し、教育機関の運営においても指導的役割を果たしましたが、その学長在職中に逝去されました。

研究分野と業績

那須宗一の専門は、現代社会が抱える様々な問題に光を当てる社会学の中でも、特に高齢化社会と関連する老人社会学、社会の歪みや病理現象を分析する社会病理学、そして犯罪の原因や構造を探求する犯罪社会学に集約されます。

高齢者の生活や福祉、社会における位置づけに関する研究は、「老人世代論」といった著作に結実し、この分野の理論的基盤構築に寄与しました。また、社会の急速な変化に伴って生じる個人や家族、集団の病理的な状態を社会学的な視点から分析し、その構造やメカニズムの解明に努めました。犯罪現象についても、単なる法的な問題としてではなく、社会構造や環境要因との関連から深く考察し、その知見は「犯罪社会学」や「犯罪統制の近代化」といった共編著に反映されています。

主な著作

那須宗一は、その幅広い研究活動を通じて、多くの著作を世に送り出しました。単著としては、高齢者の生活や心理に焦点を当てた『老人世代論 老人福祉の理論と現状分析』（1962年）、定年後の人生設計について論じた『定年 五十五歳の試練』（1972年）、高齢期の生き方について提言する『不老のすすめ』（1976年）、そして前向きな高齢期を提唱する『60歳からの人生に自信がわく本』（1984年）などがあります。

また、多くの研究者との共編著も数多く手掛けており、自身の専門分野である犯罪社会学や老人社会学を中心に、多様なテーマを取り扱っています。

『犯罪社会学』（橋本重三郎共編、1968年）
『老人扶養の研究 老人家族の社会学』（湯沢雍彦共編、1970年）
『老人と家族の社会学』（増田光吉共編、1972年）
『社会変動の病理学』（1975年）
『犯罪統制の近代化』（1976年）
『ハンドブック老年学』（長谷川和夫共編、1976年）
『知りたい隣の国・中国』（高麗義久共著、1980年）
『家族病理の社会学』（上子武次共編、1980年）
『老人を動きやすくするためのケアを考える 社会生物学の視点から』（入来正躬共編、1983年）
『現代病理の社会学』（1983年）
* 『老年学事典』（一番ヶ瀬康子ほか共編、1989年）

さらに、ハンス・フライヤアの『社会学』の翻訳（阿閉吉男共訳、1935年）も手掛けており、海外の社会学理論の紹介にも貢献しました。この翻訳書は後に『社会学入門』と改題されています。

那須宗一の業績は、彼の専門分野における学術研究の進展に寄与するとともに、高齢化社会の課題や社会病理、犯罪といった現代社会が直面する問題への理解を深める上で重要な意義を持っています。彼の研究と思想は、退職後に刊行された追悼文集『白門不老門 那須宗一先生追悼文集』（横山実編、1991年）にも偲ばれています。

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