郁久閭呉提

郁久閭呉提（いくきゅうりょ ごてい）

郁久閭呉提（? - 444年）は、5世紀前半に柔然を統治した可汗です。父は大檀で、彼の死後、呉提が跡を継ぎ、敕連可汗（ちょくれんかがん）と号しました。この称号は「神聖な可汗」を意味します。

生涯

即位と北魏との関係

429年、父である大檀の死後、呉提は可汗の座に就きました。即位後、彼は北魏との関係を重視し、431年には使節を派遣して朝貢を行いました。これは、かつて柔然の斥候兵が北魏に捕らえられた際、太武帝が彼らに手厚い待遇を与えて帰国させたことへの恩義を示すものでした。太武帝も柔然からの使者を歓待し、両国の関係は一時的に良好なものとなりました。

婚姻関係と貢物

434年、北魏の太武帝は呉提に公主を娶らせました。これにより、柔然は再び使者を派遣し、呉提の妹を太武帝の夫人として献上しました。呉提の妹は左昭儀に昇格し、呉提自身も兄の禿鹿傀や側近を伴って来朝し、多数の馬を献上しました。太武帝はこれらの貢物と友好的な関係に満足し、彼らに手厚い贈り物を与えました。その後も、呉提は北魏への朝貢を続けました。

関係の悪化と軍事衝突

436年、柔然は北魏との和親を破棄し、国境を侵犯するようになります。438年には、太武帝自らが軍を率いて柔然を討伐しました。北魏軍は複数のルートから柔然領に侵攻しましたが、柔然軍を発見できずに帰還しました。この遠征中、漠北では大旱魃が発生し、多くの軍馬が犠牲となりました。

439年、呉提は北魏に侵攻し、首都近郊にまで迫りました。しかし、北魏軍の迎撃により柔然軍は敗北し、呉提自身も撤退を余儀なくされました。その後、呉提は南朝宋に使いを送り、貢物を献上することで関係を築こうとしました。

高昌への介入

442年、呉提は伊吾を攻撃し、その王である唐契を高昌へ追いやりました。柔然は高昌の奪取を試みましたが、高昌太守の救援に駆け付けた柔然部帥の活躍により、唐契は殺害されました。その後、柔然は高昌を奪取しますが、最終的には北魏の支配下に入りました。

北魏の再度の侵攻と呉提の死

443年、太武帝は再び漠南へ遠征し、柔然軍を攻撃しました。呉提は北魏軍の追撃をかわし、なんとか逃れることに成功しました。しかし、444年に呉提は亡くなり、息子の吐賀真が跡を継ぎました。

呉提の治世は、柔然が北魏との間で友好的な関係と軍事的対立を繰り返した時代でした。彼の死後、柔然は新たな局面を迎えることになります。

参考文献

『宋書』（文帝紀）
『魏書』（列伝第八十九 高昌、列伝第九十 西域、列伝第九十一 蠕蠕）
* 『北史』（列伝第八十六 蠕蠕）

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