郁久閭阿那瓌

郁久閭阿那瓌（いくくりょ あなかい）：柔然の可汗、その生涯と北朝との関係

郁久閭阿那瓌（? - 552年）は、柔然の可汗であり、伏図の子、醜奴の弟にあたります。彼の可汗号は敕連頭兵豆伐可汗（ちょくれんとうへいとうはつかがん）で、「把攬可汗」（手中にする可汗）という意味を持ちます。

生涯

520年、兄の醜奴が殺害された後、阿那瓌は可汗として即位しました。しかし、即位からわずか十日後、族兄の示発の攻撃を受け敗北し、弟の乙居伐と共に北魏へ亡命しました。北魏では、孝明帝の歓待を受け、朔方郡開国公・蠕蠕王に封じられました。

521年、柔然本国では婆羅門が示発を討伐し可汗となりますが、後に高車に追放され北魏に帰順します。これにより、阿那瓌は柔然に復権することができました。

523年、阿那瓌の民衆は大飢饉に見舞われ、北魏の長城内を略奪しました。孝明帝は李崇らに討伐を命じますが、柔然軍に追いつけず帰還しました。

524年、北魏で六鎮の乱が勃発すると、525年に阿那瓌は軍を率いて破六韓抜陵を討伐。この功績により、阿那瓌は敕連頭兵豆伐可汗と号しました。

北朝との関係

阿那瓌は北魏、東魏、西魏という分裂した北朝との間で複雑な外交を展開しました。528年と529年には南朝梁にも朝貢しています。

532年、阿那瓌は北魏に公主との婚姻を求め、533年に孝武帝の許可を得ますが、孝武帝の死と北魏の東西分裂により実現しませんでした。

535年、西魏が柔然に侵攻された際、和親を求めました。東魏は阿那瓌を引き込むため、公主を嫁がせ、自身も阿那瓌の娘を皇后としました。しかし、阿那瓌は東魏の使者を留め置き、東魏侵略を繰り返すようになります。

540年、高歓は張徽纂を阿那瓌への使者として派遣し、東魏への帰順を促しました。阿那瓌はこれを受け入れ、東魏との関係を改善し、婚姻を求めました。

550年、東魏の孝静帝は阿那瓌の子に公主を嫁がせ、551年には阿那瓌の孫娘を高歓の子に嫁がせるなど、婚姻関係を深めました。

最期

552年、阿那瓌は突厥に敗れ自殺しました。太子の菴羅辰らは北斉へ亡命し、柔然は再び混乱の時代を迎えることとなりました。

阿那瓌の生涯は、柔然という国家が激動の時代を生き抜くために、いかに外交戦略を駆使したかを示す好例と言えるでしょう。彼の治世は、北朝との複雑な関係の中で、柔然の命脈を繋ぎ止めるための苦闘の連続でした。

参考資料

• - 『魏書』(列伝第九十一 蠕蠕)
• - 『北史』(列伝第八十六 蠕蠕)

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