高歓

高歓（こう かん）

高歓（496年 - 547年）は、中国南北朝時代の北魏末から東魏にかけての権臣。北斉の基礎を築いたことで知られています。鮮卑化した漢族であり、字は賀六渾（がろくこん）。渤海郡蓨県（現在の河北省衡水市景県）の出身です。

生涯

若き日

496年、懐朔鎮（現在の包頭市固陽県）で、高樹生と韓期姫の長男として生まれました。幼くして母を亡くし、姉婿の尉景のもとで養育されます。若い頃は貧しく、婁昭君を妻に迎えてようやく馬を手に入れ、懐朔鎮の隊主となります。洛陽への使者として頻繁に往来するうちに、多くの人士と交流し、司馬子如、劉貴、賈顕智、孫騰、侯景らと親交を深めました。

反乱への参加と台頭

525年、杜洛周が上谷で反乱を起こすと、高歓は同志とともに懐朔鎮を離れ、杜洛周に従います。その後、葛栄を経て、朝廷軍を率いる爾朱栄のもとに身を寄せました。劉貴の推薦により爾朱栄に才能を認められ、親密な関係を築きます。爾朱栄が并州に拠ると、高歓はその下で親信都督として重用されます。

河陰の変と葛栄討伐

528年、孝明帝が霊太后によって殺害されると、爾朱栄は挙兵して洛陽に入り、高歓はその先鋒を務めました。爾朱栄は霊太后や幼主の元釗を河陰で殺害（河陰の変）。爾朱栄が簒奪を企てた際には、高歓は鋳像の占いによって諫止しました。孝荘帝が即位すると、高歓は銅鞮伯に封じられます。爾朱栄の命を受けて葛栄を攻撃し、7人の反乱者を降伏させ、羊侃や邢杲といった敵将を破るなど、軍功を重ねて晋州刺史に任じられます。

爾朱氏との対立と挙兵

530年、孝荘帝が爾朱栄を殺害すると、爾朱兆が復讐のために挙兵し、高歓に協力を求めます。高歓はこれを拒否し、爾朱兆が孝荘帝を捕らえて晋陽に連行すると、皇帝の身柄を奪おうと画策しますが失敗。孝荘帝は爾朱兆に殺害され、爾朱世隆らが元曄を皇帝に擁立します。高歓は平陽郡公に封じられます。その後、費也頭の紇豆陵歩藩が晋陽に迫ると、爾朱兆と協力してこれを撃破し、爾朱兆と兄弟の契りを結びました。

531年、高歓は信都に進軍し、冀州を拠点とします。爾朱度律が元曄を廃位して節閔帝を立てると、高歓は渤海王に封じられますが、入朝を拒否。信都で反爾朱氏の兵を挙げ、爾朱氏との全面対決へと進みます。

韓陵の戦いと爾朱氏の滅亡

532年、高歓は鄴を攻略し、後廃帝により大丞相、柱国大将軍、太師に任じられます。爾朱天光、爾朱兆、爾朱度律、爾朱仲遠ら爾朱氏の軍勢が鄴を目指して進軍してきますが、高歓は韓陵の戦いでこれを打ち破り、爾朱氏を壊滅させました。爾朱兆は自害し、爾朱仲遠は南朝梁へ亡命しました。

東魏の成立

洛陽に入った高歓は、節閔帝と後廃帝を廃位し、孝武帝を擁立しました。大丞相、太師、世襲定州刺史の位を受け、鄴に帰還します。しかし、孝武帝との対立が深まり、534年に孝武帝が宇文泰を頼って長安へ逃れると、高歓は元善見（孝静帝）を皇帝に擁立し、東魏を成立させました。

西魏との戦いと晩年

東魏成立後も、西魏との戦いは続きます。537年の沙苑の戦いでは宇文泰に大敗を喫し、538年の河橋・邙山の戦いでは洛陽を奪回するものの、多くの将兵を失いました。542年の玉壁の戦いでも韋孝寛に阻まれ、攻略に失敗。546年にも玉壁城を攻めますが、やはり落とすことができずに撤退しました。この頃から高歓は病に伏せるようになり、547年1月8日、晋陽で死去しました。享年52歳。死後、その功績により、北斉の太祖（後に高祖）神武皇帝として追尊されました。

人物

高歓は、卓越した軍事力と政治力で北斉の基礎を築いた英雄として知られています。また、多くの人材を登用し、内政の安定にも尽力しました。

家族

正室：婁昭君（武明太后）、蠕蠕公主

多くの子女がおり、その中には北斉の皇帝となった高澄、高洋、高演、高湛らがいます。

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