郁新

明代の官僚・政治家、郁新の生涯

郁新（いく しん）は、明朝初期に活躍した官僚・政治家です。字は敦本といい、1346年に濠州鍾離県で生まれました。彼の生涯は、明朝の経済政策に深く関わり、その手腕は高く評価されています。

洪武帝に認められた才能

1389年、郁新は才能ある人物として召し出され、戸部度支主事に任命されました。その後、戸部度支郎中へと昇進し、1390年には戸部右侍郎に抜擢されます。洪武帝は、全国の戸口や農地の租税について郁新に諮問しましたが、彼は余すことなく的確に答えたため、その才能を大いに称賛しました。1393年には、戸部尚書に進み、明朝の財政を担う重要な役職を任されることになります。

財政改革への貢献

戸部尚書として、郁新は様々な財政改革に取り組みました。その一つが、親王の歳禄米を5万石から4万石に削減したことです。さらに、郡王以下の歳禄にも差を設け、歳禄制度の合理化を図りました。また、辺境への食糧輸送が滞っていた際には、召商開中法を定め、商人に粟を輸送させ、代わりに塩を支給することで、食糧供給の安定化に貢献しました。郁新は、戸部主事となった夏原吉を重用し、実務を任せることで、組織全体の効率化も図りました。

永楽帝からの信頼

1400年、病のため官を退いて帰郷しましたが、1402年に永楽帝が即位すると、再び召し出されて掌戸部事を務めることになりました。永楽帝もまた、郁新の経済政策における手腕を高く評価し、古朴を戸部侍郎として補佐につけました。1403年には、河南で蝗害が発生した際、担当役所が報告を怠ったため、郁新は責任者を厳しく審問しました。また、北京への食糧輸送が滞っていた際には、淮河から黄河までの運河の浅瀬を解消するため、積み替え輸送の提案をし、永楽帝に受け入れられました。さらに、湖広諸衛の屯田収穫基準を統一し、各穀物を米に換算する基準を定めることで、農民の負担軽減を図りました。1404年には、公、侯、伯などの封禄について、文武官の例に倣い、米と紙幣を併給するよう提案し、これも実施されました。1405年には、兵士の労苦を緩和するため、屯田の歳収を半減させる提案や、贖罪米の納入先を南京の倉に変更する提案を行い、いずれも採用されました。

その死と影響

郁新は1405年8月5日、在官のまま60歳で亡くなりました。彼の死後も、その経済政策は明朝に大きな影響を与え続けました。郁新は、明朝初期の経済政策を支え、明朝の安定に大きく貢献した人物として、歴史に名を刻んでいます。

彼の業績は、『明史』にも詳細に記録されており、後世の研究者にとっても重要な資料となっています。

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