郭煕

郭煕（かく き）

郭煕（1023年 - 1085年）は、北宋時代に活動した著名な山水画家です。彼は、自然を深く理解し、独自の画風を確立したことで知られています。郭煕の字は淳夫で、彼の出生地は孟州温県です。彼の若年期や老年期に関する具体的な記録はほとんど残されていませんが、神宗の初期に登用され、宮廷において重要な役割を果たしました。

彼は、宮廷の塩鉄副使である呉充の指示のもと、多くの壁画や大屏風を制作しました。その画風は、革新を求める若き皇帝に大きな影響を与え、彼は御書院の芸学職に就任することになります。その後、書画担当技官の最高位である待詔に昇進しました。このように、郭煕が所属した御書院は、翰林学士院の下部組織であり、通常の宮廷画家が所属する翰林図画院とは異なるところでした。彼に書記官の職が与えられたのは、伝統的な画院の枠組みに縛られず、自由にその才能を発揮できるようにするための神宗の配慮といわれています。

しかし、神宗の死後の郭煕の活動は停滞し、支持者を失うこととなりました。彼の技巧的な絵画スタイルは、次第に士大夫たちの好みに合わなくなりました。徽宗よりも後の時代には、彼の作品は忘れ去られつつあり、鄧椿が編纂した『画継』には、郭煕の壁画や屏風が宮殿から撤去され、廃品扱いされたという逸話が残されています。

画風とその影響

郭煕は、特に山水画において際立った才能を発揮しました。彼は自然との深い繋がりを持ち、「飽遊飫看、歴歴羅列於胸中」という言葉を残しています。これは、自然を理解するためには自らその場に身を置き、観察することが最良の方法であるという信念を表しています。彼の作品には、雲頭皴や蟹爪樹といった独特の技法が用いられ、これにより山水を描いた作品は多くの自然愛好者から高く評価されました。

郭煕は、中国山水画史において非常に重要な画家の一人として位置づけられており、後の歴史においては李成と共に「李郭」と称されることもあります。彼の独自のスタイルは「李郭派」と呼ばれ、董源や巨然の「董巨風格」と並んで中国山水画の二大流派として広く認識されています。

特に、彼の代表作には「早春図」があり、現在は台北の国立故宮博物院に収められています。また、郭煕の山水画の理論については、彼の子である郭思が編纂した『林泉高致集』があり、これが後の中国画論においても大きな影響を与えました。彼の革新的な画風は、現代の視点から見ても非常に高く評価されており、中国山水画の発展に寄与したことは間違いありません。

郭煕の存在は、北宋時代の文化的背景の中でも特に重要なものであり、彼の影響力は今日でも色濃く残っています。

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