郵政監察制度

郵政監察制度とは

郵政監察制度は、かつての日本の郵便事業が国営であった時代に、その運営を監督するために設けられた特別な警察制度です。この制度は、郵便物や小包が差し出されてから受取人に届くまでの過程で、遅延や誤配がないか、また郵便貯金や簡易保険における不正がないかを監視し、必要に応じて指導や処分を行う役割を担っていました。さらに、ハガキや切手といった金券の偽造、郵便為替を利用した詐欺といった犯罪の捜査も行っていました。

郵政監察官

郵政監察官は、郵政省に所属し、郵政事業の監察や関連する犯罪の取り締まりを担当する職員でした。彼らは、刑事訴訟法上、特別司法警察職員として活動し、その職務は広範囲に及びました。「郵政Gメン」という通称で知られていたように、不正行為の摘発に尽力していました。

歴史

郵政省時代

郵政監察官の制度は、郵政省設置法（昭和23年法律第244号）第26条に規定され、その定員は700名以内と定められていました。彼らは、郵政業務全般の調査を行い、その結果を郵政大臣に報告するとともに、犯罪の疑いがある場合には捜査を行い、必要に応じて犯罪の訴追にも協力する役割を持っていました。この規定は、後の郵政事業庁法にも引き継がれました。

郵政事業庁時代

郵政事業庁が設置された際も、郵政監察官に関する規定は維持されました。郵政省時代と同様に、郵政事業における犯罪に対する司法警察権が認められていましたが、逮捕状を請求する際には警察官の協力を必要としていました。

日本郵政公社時代

日本郵政公社が設立されると、郵政監察官は公社の役員または職員の中から総務大臣が指名することになりました。この際、司法警察員としての職務内容は「郵政事業に対する犯罪について、刑事訴訟法に規定する司法警察員の職務を行う」と規定され、郵政事業の範囲が「公社の行う事業」と明示されました。これにより、民間事業者が行う信書便事業に関する犯罪には郵政監察官の司法警察権は及ばないことが明確化されました。

日本郵政株式会社時代

郵政民営化に伴い、郵政監察制度は廃止されました。日本郵政株式会社には新たに監査部門が設置されましたが、これはコンプライアンスチェックを主に行う部署であり、司法警察権は持っていません。かつては、職員の不正防止のために監視カメラが導入されましたが、後に撤去されています。現在、信書便の監督は総務省総合通信局監理官が行っています。

関連事項

総務省郵政行政部
郵政三事業
特別司法警察職員
郵便物保護銃

外部リンク

『いんちき館　研究分館』より「郵政監察官等」
『いんちき館　研究分館』より「郵便物保護銃」

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