郷田兼徳

郷田兼徳の生涯

郷田兼徳（ごうだ かねのり）は、1840年（天保11年）に生まれ、1918年（大正7年）11月29日に没した、幕末の薩摩藩士であり、明治期には内務官僚として活躍しました。旧名は東郷嘉一郎といい、最終的な位階は正五位、勲等は勲五等です。

幕末から明治初期

薩摩藩士の家に生まれた郷田は、戊辰戦争に従軍しました。明治維新後、新政府に出仕し、越後府判事補に任官されたのを皮切りに、水口県少参事、東京府権少参事などを歴任しました。これらの職務を通じて、地方行政の実務経験を積みました。

青森県令時代

1874年12月22日、郷田は青森県に転任し、九等出仕として着任しました。その後、弘前出張所長官、少書記官、大書記官を経て、1882年1月14日には青森県令に昇進しました。青森県令としての郷田は、保守的な気風を持っており、弘前士族の支持を受けました。このため、当時の県政は保守派が主導し、自由民権派との対立が深まりました。

産馬騒擾事件

1882年7月、郷田県令は、産馬共会の管理を県から民間に移管する問題で、県南の代表者たちと激しく対立しました。県南側は独自にせり市を開設し、これに対し郷田県令は裁判所に訴えましたが、県側は敗訴しました。この事件は「産馬騒擾事件」として知られ、郷田県令の県政運営に大きな影響を与えました。

その後

1883年12月22日、郷田は参事院議官補に転じました。さらに、1891年5月12日には内務書記官に就任しましたが、同年7月14日に依願免本官（諭旨退官）となり、官界を退きました。これは、郷田の官僚としてのキャリアの終焉を意味しました。

栄典

郷田の功績に対し、1885年（明治18年）11月19日には勲六等単光旭日章が授与されました。

まとめ

郷田兼徳は、幕末の動乱期から明治期の激動期にかけて、地方官僚としてその生涯を捧げました。青森県令としては、保守的な立場から県政を運営し、自由民権派との対立や産馬騒擾事件など、さまざまな困難に直面しました。彼の生涯は、明治初期の地方行政における矛盾や対立を象徴する出来事として、後世に語り継がれています。

参考資料

歴代知事編纂会編『新編日本の歴代知事』歴代知事編纂会、1991年。
秦郁彦編『日本官僚制総合事典：1868 - 2000』東京大学出版会、2001年。
『青森県百科事典』東奥日報社、1981年。
内閣「元内務書記官従五位郷田兼徳外二名特旨ヲ以テ陞叙ノ件」明治24年。国立公文書館 本館-2A-018-00・任Ａ00250100

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