都市社会運動

都市社会運動とは、1970年代に都市社会学者マニュエル・カステルが提唱した新都市社会学における分析概念です。これは、地域住民などの末端組織（グラスルーツ）のレベルで、公共財の再配分権を主張する社会運動を指します。

概要

カステルの研究は、公共の財やサービス（集合的消費）に対する国家の介入と計画が重要性を増すにつれて、その矛盾が表面化することに着目しました。国家が関与を深める一方で、都市社会運動も活発化します。ここでいう社会運動は、必ずしも階級に基づくものではなく、組織が持つ資源を活用して、公共財の再配分権を主張する運動を意味します。

従来のマルクス主義分析は、生産に重点を置きすぎており、脱工業社会における政治経済において重要な社会現象を扱うことができませんでした。カステルは、集合的消費、国家介入の増大、都市計画の矛盾、地域住民の抵抗、近隣組織、都市政治といった点に着目し、都市社会運動という概念を提唱しました。

マルクス主義分析との違い

従来のマルクス主義分析では、社会運動を階級闘争の延長として捉え、生産手段の所有をめぐる対立に焦点を当てていました。しかし、カステルは、現代社会においては、生活の質や環境、文化といった、より多様な問題が社会運動の重要な要素となっていることを指摘しました。都市社会運動は、単なる経済的な要求だけでなく、都市における生活空間のあり方や、地域社会の自治といった、より根源的な問題を提起するものとして捉えられます。

近年のカステルの視点

ただし、近年カステルは、都市計画と都市社会運動という二分法的な考え方から離れつつあります。現代社会においては、都市計画と社会運動は対立するだけでなく、相互に影響しあい、新たな都市のあり方を形成していくという視点を重視しています。

関連項目

新しい社会運動

参考文献

マニュエル・カステル（石川淳志監訳）『都市とグラスルーツ――都市社会運動の比較文化理論』法政大学出版局，1997年，ISBN 4588675044．
* スチュアート・ロー（山田操・吉原直樹訳）『都市社会運動――カステル以後の都市』恒星社厚生閣，1989年，ISBN 4769906609．

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