鄢陵の戦い

鄢陵の戦い：春秋時代の覇権争い

鄢陵の戦い（えんりょうのたたかい）は、紀元前575年に中国春秋時代に起こった、晋と楚の二大強国が激突した戦いです。現在の河南省許昌市鄢陵県にあたる場所で戦われ、晋が勝利を収めました。この戦いは、当時の中国の勢力図を大きく変動させる出来事となりました。

戦いの背景

紀元前579年、晋と楚は宋の地で会盟し、一時的に停戦しました。両国と親交のあった宋の華元の仲介により、両国は宋と盟約を結んだのです。しかし、この和平は長くは続きませんでした。紀元前577年、晋の同盟国である鄭が、楚の同盟国である許を攻撃。これに対し、楚の共王が許を救うために鄭を攻めました。翌年、楚に領土を割譲して和睦した鄭は、楚の勢力下に置かれることになりました。この鄭の裏切りに激怒した晋の厲公は、衛・斉・魯などの諸侯を率いて鄭を討伐しようとしました。これに対し、鄭は楚に救援を求め、晋と楚は再び戦火を交えることになったのです。この戦いが、鄢陵の戦いです。

戦闘の経過

鄢陵の戦いにおいて、楚軍は中軍、左軍、右軍の三軍で戦いに臨みました。一方、晋軍は中軍、上軍、下軍、新軍の四軍で迎え撃ちました。晋軍の編成は以下の通りです。

君主：厲公　軍師：苗賁皇
中軍 - 将：欒書　佐：士燮
上軍 - 将：郤錡　佐：荀偃（中行偃）
下軍 - 将：韓厥　佐：荀罃（智罃）
新軍 - 将：郤犨　佐：郤至

対する楚軍の編成は以下の通りです。

君主：共王　軍師：伯州犂
中軍 - 将：子反（公子側、荘王の兄弟）
左軍 - 将：子重（公子嬰斉、荘王の兄弟）
* 右軍 - 将：子辛（公子壬夫、荘王の兄弟）

戦闘は激戦となり、楚の共王自身も晋の大夫である魏錡に目を射られ負傷するほどの激しさでした。怒った共王は、家臣の養由基に命じて魏錡を射殺させました。しかし、共王の負傷は楚軍に動揺を与え、戦況は晋軍有利へと傾きました。その夜、共王は子反に翌日の作戦を相談しようとしましたが、子反は酒に酔い潰れていました。これを知った共王は、楚軍の敗北を悟り、その日のうちに軍を引いて首都郢へ帰還しました。

戦後の影響

戦後、子反は戦中の失態を子重に責められ、自殺しました。勝利した晋でしたが、厲公は勝利に驕り、傲慢な態度を取るようになりました。士燮は、厲公の増長が晋に災いをもたらすことを恐れ、家臣に自分を呪わせて死にました。その後、厲公は自らの権力を強化するために、国内の豪族を排除しようと画策し、有力な郤氏の一族三人を殺害しました。これに恐れを抱いた欒書と荀偃は、厲公を殺害しました。

この鄢陵の戦いは、邲の戦いで楚に傾いていた覇権を再び晋に引き戻す転換点となりました。厲公の死後、晋には名君と謳われる悼公が登場し、晋の覇権を確固たるものとしました。この戦いは、春秋時代の覇権争いの歴史において、重要なターニングポイントとなったのです。

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