鄭慶姫

鄭慶姫：北朝鮮の伝説的女性スパイの物語

鄭慶姫（チョン ギョンヒ）は、北朝鮮工作員として知られる美貌のスパイであり、1928年に日本統治下の朝鮮の慶尚北道で生まれました。彼女は、北朝鮮の重要な人物である金福信と共に金日成から育てられた女性人材の一人とされています。特に1975年には、北朝鮮の指導者金正日によって朝鮮労働党連絡部の部長に抜擢され、対南業務を担当しました。

幼少期と逮捕

鄭慶姫の若い頃は、高度な教育を受けながらも、彼女は朝鮮共産党の党員として活動を開始しました。しかし、活動の過程で官憲に逮捕され、ソウルの西大門刑務所で服役することとなりました。1950年に勃発した朝鮮戦争のなかで、朝鮮人民軍によって解放され、その後北朝鮮に渡り、工作員としての教育を受けることになります。

スパイ活動の始まり

彼女は金剛政治学院（後の金正日政治軍事大学）で訓練を受け、働きかけ術や情報収集能力を身につけました。そして彼女の名は、北朝鮮の工作員の中で「英雄」や「伝説」の存在として広まっていきました。特に、教育機関の副学長である申ドヒョンが彼女について語った逸話は有名で、「韓国に潜入するために自分の歯を全て抜いた」という伝説が残っています。

出世と党内での役割

鄭慶姫は、たたき上げのキャリアを経て連絡部の課長に昇進し、その後、金正日の指名によって対南事業をまとめる役割を果たしました。1977年から1978年にかけて、日本国内で若い女性が失踪する事件が発生し、これが後の北朝鮮による拉致事件と判明します。この時期、金正日は毎週のように私的なパーティーを開催し、彼女もその場にいたとされます。

拉致事件との関わり

1978年1月、鄭慶姫は香港で連れてこられた韓国の女優崔銀姫と対面し、彼女は鄭の印象をスレンダーで美しいと評しました。崔銀姫との対話の際、鄭慶姫は柔らかい口調で「革命のために努力しましょう」と言い、彼女の鋭い観察力が感じられました。また、鄭はこの時期に拉致計画の指揮をとったことからも、その影響力が伺えます。

秘密パーティーとその後

1970年代後半には、連絡部内での秘密パーティーが拡大し、鄭慶姫は常にその場に現れ、金正日や他の幹部たちと共に時間を過ごしていました。彼女は「老処女」と冗談を言われながらも、場を盛り上げる役割を担い、酒を飲みながらも冷静さを保つ姿が印象的でした。

その後、社会文化部に名称が変更されると、鄭慶姫は政治の表舞台から姿を消し、その存在は次第に薄れていきました。しかし、彼女の影響力やスパイ活動の数々は、現在でも北朝鮮の歴史に刻まれています。彼女のストーリーは、政治的背景を持つ女性の力強さと複雑さを象徴するものであり、北朝鮮におけるスパイ文化の一端を知る貴重な要素となっています。

もう一度検索