酒井七馬

酒井七馬：関西漫画界の影の功労者

酒井七馬（さかいしちま、1905年4月26日-1969年1月23日）は、日本の漫画家、アニメーター、アニメーション演出家、紙芝居作家として知られています。本名は酒井弥之助。多様なペンネームを使い分け、大阪の漫画界で長年に渡り活躍しました。

少年時代から漫画家への道

大阪府出身の酒井は、旧制中学を中退後、アルバイトをしながら漫画創作を始めます。1923年には大阪の漫画雑誌「大阪パック」で小寺鳩甫に師事し、編集の傍ら漫画を描き続けました。その後、大阪新聞の嘱託漫画記者を経て、1935年には日活京都漫画部に入社。アニメーターとして活動を始めます。しかし、同漫画部が解散したため、再び「大阪パック」と大阪新聞での漫画家生活に戻ります。

戦中から戦後にかけて

戦中、軍人向けの漫画小冊子制作で成功を収めると、時局に合わせた漫画や新作落語の台本執筆なども行いました。日本映画科学研究所への勤務を経て、アニメーターとしての経験を活かした漫画制作を続けました。1942年には、翼賛組織である日本漫画奉公会の関西支部長に就任しています。

終戦直後、アメリカ軍兵士の似顔絵を描いて生計を立てていた酒井は、入手したアメリカンコミックから強い影響を受けます。1946年、自ら漫画雑誌を創刊し、編集も担当。翌1947年には、手塚治虫との共作『新宝島』を発表。大ヒットを記録し、赤本漫画ブームの火付け役となりました。この作品における「映画的表現」は、手塚治虫の神話化にも繋がりましたが、元アニメーターである酒井七馬の貢献も大きかったと言われています。

『新宝島』後の活躍と転身

『新宝島』の大成功の後、酒井は多くの赤本漫画を発表。しかし、赤本ブームの終焉とともに、1950年代からは紙芝居作家に転身し、「左久良五郎」名義で多数の作品を発表します。大阪日日新聞で絵物語を連載するなど、紙芝居作家としても成功を収めました。

晩年と没後

テレビアニメの普及により紙芝居が衰退すると、酒井はテレビアニメ制作の下請けとして携わるようになり、『オバケのQ太郎』や『ロボタン』の絵コンテを担当します。晩年は若手漫画家の育成にも力を注ぎ、入門書を監修したり、漫画サークルを設立したりしました。しかし、肺結核により1969年に63歳で死去。没後、手塚治虫の著作で酒井の晩年の生活がいくらか誇張された形で記述され、伝説化しましたが、実際は親族や知人に囲まれた生活を送っていたとされています。

酒井七馬の足跡

酒井七馬は、多様な分野で活躍した漫画家でした。アニメーターとしての経験、編集者としての活動、そして後進の育成に情熱を注いだ彼の功績は、多くの漫画家たちに影響を与え、関西漫画界に大きな足跡を残しました。手塚治虫との関係性も注目され、その生涯は、時代の変遷と漫画文化発展の一端を垣間見せる興味深いものです。様々な資料や文献から彼の業績を探ることによって、改めて酒井七馬という人物とその時代背景に対する理解を深めることができるでしょう。現在でも彼の作品や活動は、現代の漫画文化に繋がっていると言えるでしょう。

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