酒井忠道

酒井忠道は、江戸時代中期から後期にかけて活躍した播磨姫路藩の第3代藩主です。雅楽頭系酒井家の16代目にあたります。

寛政2年（1790年）、12歳で父である第2代藩主・酒井忠以の跡を継ぎました。当時の姫路藩は深刻な財政難に直面しており、藩政改革は急務でした。父・忠以も河合道臣（寸翁）を登用して改革を試みましたが、藩内の反対勢力により失敗に終わり、道臣は失脚していました。

しかし、忠道は道臣の才能を高く評価しており、再び彼を登用して藩政改革に乗り出します。文化7年（1810年）には「在町被仰渡之覚」を発表し、藩政改革の基本方針を明確に示しました。この中で、領民だけでなく藩士全体にも改革の必要性を訴え、意識改革を促しました。

道臣はまず、飢饉に備えて百姓に対し、社倉という食料保管制度を設けました。これは、凶作に備えて村ごとに食料を蓄えておく制度で、領民の生活安定に大きく貢献しました。また、町民に対しては冥加銀講という貯蓄制度を設け、困窮時の備えとしました。

さらに、養蚕所や織物所を藩の直轄とし、専売制を導入しました。サトウキビなど、当時希少で高価だった物産の栽培も奨励しました。特に、木綿の栽培に力を入れました。木綿は当時、庶民の衣服として広く普及しており、生活必需品となっていました。

姫路は温暖な気候に恵まれ、木綿の栽培に適した土地でしたが、木綿の売買は主に大坂商人に牛耳られていました。道臣は、木綿の売買権を商人から取り戻し、藩の直轄とするべく尽力します。当初は商人の抵抗に苦慮しましたが、忠道の八男・忠学の正室が第11代将軍・徳川家斉の娘・喜代姫であったことが幸いしました。道臣は家斉の後ろ盾を得て、木綿の売買権を藩の直轄とすることに成功しました。この木綿の専売により、姫路藩は莫大な利益を得ることができ、24万両もの蓄えを築き、借金を全て返済することができました。

文化11年（1814年）、忠道は38歳で弟の忠実に家督を譲り、隠居しました。天保8年（1837年）に61歳で死去しています。

年譜
1777年（安永6年）：誕生
1790年（寛政2年）：酒井家を相続
1814年（文化11年）：隠居
1837年（天保8年）：死去

官歴
1790年（寛政2年）：従五位下雅楽頭
1791年（寛政3年）：従四位下
* 1814年（文化11年）：主計頭、備前守

酒井忠道は、藩政改革を通じて姫路藩の財政を立て直し、領民の生活を安定させた名君として、その名を歴史に刻んでいます。

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