酸化タングステン(VI)

三酸化タングステン：性質、製造、そして多様な用途

三酸化[タングステン]、別名酸化[タングステン]や無水タングステン酸は、化学式WO3で表される無機化合物です。タングステン鉱石の精錬において重要な中間体であり、最終的には金属タングステンへと還元されます。

製造方法

三酸化タングステンの製造方法は複数存在します。一般的な方法としては、タングステン鉱石をアルカリで処理することでWO3を得ます。その後、炭素または水素ガスを用いた還元反応によって、純粋な金属タングステンが生成されます。反応式は以下の通りです。

炭素還元：`2WO3 + 3C + 熱 → 2W + 3CO2`
水素還元：`WO3 + 3H2 + 熱 → W + 3H2O`

また、[灰重石]を塩酸と反応させ、タングステン酸(H2WO4)を生成した後、加熱によって脱水することでWO3を得る方法も用いられます。

`CaWO4 + 2HCl → CaCl2 + H2WO4`

`H2WO4 + 熱 → H2O + WO3`

さらに、パラタングステン酸アンモニウム(APT)を酸化条件下で焼成することによっても合成可能です。

`(NH4)10[H2W12O42]・4H2O + 熱 → 12WO3 + 10NH3 + 10H2O`

天然における存在

自然界では、重石華(WO3・H2O)、メイマカイト(WO3・2H2O)、および加水重石華（組成はメイマカイトと同じ）といった水和物の形で存在しますが、これらの鉱物は非常に稀少です。

結晶構造

WO3の結晶構造は温度に依存して変化します。740℃以上では正方晶系、330℃～740℃では斜方晶系、17℃～330℃では単斜晶系、-50℃～17℃では三斜晶系をとります。一般的な構造は、空間群P21/nの単斜晶系です。

用途

三酸化タングステンは、その独特の性質から様々な用途に利用されています。

蛍光体: X線スクリーンの蛍光面などに用いられるタングステン酸塩の原料として重要です。
顔料: 鮮やかな黄色を呈するため、陶磁器や顔料として利用されます。
難燃剤: 建物の不燃加工にも用いられます。
スマートウインドウ: 近年では、エレクトロクロミックウインドウやスマートウインドウの材料として注目を集めています。これらのウインドウは、電圧印加によって光の透過率を制御できます。
* 水素センサ: 水素ガス検知材料としても期待されています。WO3層に白金(Pt)またはパラジウム(Pd)触媒層を重ねることで、水素ガスを検知します。水素イオンと電子の到達により結晶構造が変化し、ガスクロミック現象（着色変化）を利用して水素濃度を検知します。この反応は可逆的で、繰り返し使用が可能です。

まとめ

三酸化タングステンは、金属タングステンの製造だけでなく、様々な分野で重要な役割を果たす化合物です。その多様な用途と、更なる応用研究の進展が期待されています。今後の技術革新により、三酸化タングステンの利用範囲は更に広がるでしょう。

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