酸化鉄(III)

酸化[鉄]：多様な用途を持つ赤さび

酸化[鉄] (Fe₂O₃) は、別名酸化第二鉄、ヘマタイト、赤色酸化鉄、磁赤鉄鉱などと呼ばれ、自然界にも広く存在する鉄の酸化物です。一般的には赤褐色の粉末状物質として知られており、私たちが日常的に目にする「赤さび」の主成分でもあります。

その結晶構造は、α相、β相、γ相、ε相など、多様な多形を示すことが知られています。α-Fe₂O₃は菱面体晶で、最も一般的な形で、天然鉱物ヘマタイトとして産出され、主要な鉄鉱石として採掘されています。一方、β相やγ相は準安定な状態であり、高温や特定の条件下で生成します。γ相は磁赤鉄鉱として自然界にも存在し、フェリ磁性を示す特徴があります。ε相は、γ相からα相への相転移過程で観察される中間相です。

酸化[鉄]の用途は非常に多岐にわたります。

磁気記録媒体

酸化[鉄]の粒子を磁化することで情報を記録する磁気記録媒体として、フロッピーディスクや磁気テープなどに古くから利用されてきました。現在でも、ハードディスクドライブなどにおいて、その高いコストパフォーマンスから重要な役割を果たしています。また、磁気インク文字認識（MICR）技術にも用いられています。

研磨剤

非常に微細な酸化[鉄]の粒子は、ジュエラーズルージュ（rouge）と呼ばれ、金属製品やガラスレンズなどの研磨剤として利用されてきました。高い研磨力と、金などの金属をわずかに着色する性質から、装飾品の仕上げなどにおいては今でも重宝されています。近年では、酸化セリウムなどの研磨剤にその地位を譲りつつありますが、精密な研磨が必要な場面では依然として用いられています。

顔料

酸化[鉄]は、顔料としても広く用いられています。Pigment Brown 6、Pigment Brown 7、Pigment Red 101などの名称で、塗料やインク、化粧品などに使用され、食品にも安全な種類もあります。伝統的な赤こんにゃくの色付けなどにも用いられているほか、陶芸の釉薬としても使用され、焼き付けによって黒色のFe₃O₄に変化します。

医療用途

近年では、酸化[鉄]のナノ粒子が医療分野でも注目を集めています。核磁気共鳴画像法（MRI）のコントラスト造影剤として用いられる他、薬剤送達システムや局所的な温熱療法などにも応用が進められています。

その他

酸化[鉄]は、金属[鉄]]の製造における溶鉱炉プロセスや、テルミット反応などにも利用されます。テルミット反応は、酸化鉄]とアルミニウムの混合物を点火することで、非常に高温の[[鉄を生成する反応で、溶接などの用途に用いられます。

このように、酸化[鉄]は、その多様な性質と特性から、古くから現代社会まで幅広い分野で重要な役割を担っています。今後も、ナノテクノロジーの進歩などにより、新たな用途開発が期待されます。

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