醤院

醤院（しょういん）について

醤院は、古代日本の律令制において、宮内省に属する大膳職という役所の一部でした。大膳職は、天皇や皇族の食事を司る重要な役割を担っており、その中で醤院は、特に調味料の製造と保管に特化した施設でした。

概要

醤院は、大膳職の建物の西隣に位置していました。しかし、その正確な位置については、主水司という別の役所の北側とする説と南側とする説があり、研究者の間でも意見が分かれています。いずれにしても、大膳職の施設群の一部として、重要な役割を果たしていたことは間違いありません。

醤院の内部には、「高部神（たかべのかみ、または、たかべの神）」という神が祀られていました。この神は、調味料の製造や保管に関わる神として、丁重に扱われていたと考えられます。貞観元年（859年）には、高部神に対して従五位下という位が授けられており、朝廷からの崇敬の厚さが窺えます。

醤院の役割

醤院の主な役割は、大膳職が製造した醤（ひしお）や未醤（みしょう）といった調味料を保管することでした。醤は、穀物や魚などを発酵させて作る、現代の醤油や味噌に近い調味料であり、当時の食事には欠かせないものでした。未醤は、醤の製造過程でできる未完成の調味料であり、こちらも様々な料理に用いられていたと考えられます。

醤院は、これらの貴重な調味料を適切に管理し、必要な時に大膳職に供給する役割を担っていました。調味料の品質を維持するために、温度や湿度などを管理する特別な設備や技術があったのかもしれません。

律令制度における醤院

律令制度は、7世紀後半から10世紀にかけての日本で施行された、中国の律令制度を模範とした統治システムです。この制度の下では、中央政府が全国を支配し、様々な役所が設けられて、それぞれの役割を分担していました。宮内省は、皇室に関する事務を司る役所であり、大膳職はその一部として、天皇や皇族の食事を支えていました。

醤院は、このような律令制度の中で、食文化を支える重要な役割を担っていた施設と言えます。その存在は、当時の日本における食に対する意識の高さや、調味料の重要性を示していると言えるでしょう。

まとめ

醤院は、日本の律令制において、宮内省大膳職に属し、醤や未醤などの調味料を保管した施設でした。大膳職の西隣に位置し、内部には高部神が祀られていました。その役割は、調味料の安定供給を通じて、当時の食文化を支えることにありました。

参考文献

福山敏男「醤院」（『国史大辞典 7』（吉川弘文館、1986年） ISBN 978-4-642-00507-4）
関口力「醤院」（『平安時代史事典』（角川書店、1994年） ISBN 978-4-04-031700-7）

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