大膳職

大膳職（だいぜんしき/おおかしわでのつかさ）

大膳職は、日本の律令制において宮内省に属する官司であり、朝廷における饗膳（きょうぜん）、つまり臣下をもてなすための食事を供する役割を担っていました。

職掌

大宝律令以前は「膳職」という名称でしたが、大宝律令の制定時に、天皇の食事を掌る内膳司と、饗膳のための食事を掌る大膳職とに分割されました。ただし、主食については大炊寮（おおいりょう）が担当し、大膳職は副食や調味料などの調達、製造、調理、供給を主な職務としていました。

『養老令』によると、大膳職は醢（ししびしお：肉や魚を塩辛状にしたもの）、醤（ひしお）・未醤（みそ）などの調味料、菓（くだもの）、雑餅（ぞうへい：雑穀などを用いた餅）などを供給していました。また、管下の組織として、菓・餅類を扱う「菓餅所」と、醤・未醤を扱う「醤院」が設置されていました。

『官職秘抄』、『職原鈔』、『百寮訓要抄』などの記録によれば、後世には、長官である大夫（たいふ）は官位相当よりも高い四位から選ばれる一方、次官である亮（すけ）は官位相当よりも低い六位から選ばれることが多かったとされています。これは、大夫の職務の重要性が高く評価されていたことを示唆しています。また、大同3年（808年）には、少進（しょうじょう）・少属（しょうさかん）の定員がそれぞれ1名ずつ増員されています。

職員

大膳職には、以下の職員が配置されていました。

大夫（正五位下相当、後に従四位下相当） 1名
権大夫 1名
亮（従五位下相当） 1名
権亮 1名
大進（従六位下相当） 1名
少進（正七位上相当） 1名
大属（正八位上相当） 1名
少属（従八位上相当） 1名
主醤（品官、正七位下相当） 2名
主果餅（品官、正七位下相当） 2名
史生
職掌
膳部（伴部） 160名
使部 30名
直丁 2名
駈使部 80名

このほか、鵜飼（うかい）、江人（えびと）、網引（あびき）、未醤戸（みそべ）などの雑供戸（ぞうくど）が付属していました。これらの人々は、大膳職に必要な食材を調達する役割を担っていました。

その他

『延喜式』神名帳によれば、延長5年（927年）頃の大膳職には、御食津神社（みけつじんじゃ）・火雷神社（からいじんじゃ）・高倍神社（たかべじんじゃ）の3社が祀られていました。これらの神社は、大膳職における食に関する祭祀を司っていたと考えられています。

『高橋氏文』逸文によれば、上総国の安房大神（現在の安房神社に比定）が、その御食津神であるとされています。

脚注

関連項目

* 宮内庁管理部 - 現代では大膳課が相当します。

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