里綾実

里 綾実

1989年12月21日生まれ、鹿児島県奄美市名瀬出身の元女子プロ野球選手、そして指導者、野球の普及活動家です。日本代表としても世界で活躍し、現在は埼玉西武ライオンズ・レディースに所属しながら、国内外の様々な舞台で野球に関わっています。「野球はみんなのスポーツ」の代表を務めるほか、将来的に始動するアメリカの女子プロ野球リーグの特別アドバイザーにも就任しており、その活動範囲は多岐にわたります。

幼少期からプロ入りまで

奄美大島で生まれ育った里氏が野球と出会ったのは、4歳上の兄に影響を受けたことがきっかけでした。小学3年生の時に喜界島へ転居し、少年野球チーム「ガッツ喜界」で本格的に競技を開始、この頃から投手を務めます。小学6年生で再び奄美大島に戻ると、硬式の「名瀬オリオンズ」に所属し、引き続きピッチャーとして腕を磨きました。地元の中学校には女子野球部がなかったため、当初はバスケットボール部に所属しましたが、野球への情熱を抑えきれず、特別な許可を得て男子軟式野球部へ入部。そこでは投手だけでなく三塁手としてもプレーし、自身のスキルを広げました。

中学卒業後の進路として、選手層の厚いソフトボールへの転向も視野に入れていましたが、元実業団バレーボール選手であった母親からの助言や、女子硬式野球部を持つ高校の存在を知り、強豪として知られる神村学園への進学を決意します。高校時代には、3年時に出場した全国高等学校女子硬式野球選抜大会でチームの優勝に貢献し、その実力を全国に示しました。

さらなるレベルアップを目指し、女子野球日本代表入りを目標に掲げ、尚美学園大学へ進学。大学の女子硬式野球部で研鑽を積みました。卒業を控えた時期に、野球を続けながら仕事も両立したいと考え、紹介を通じて福知山成美高等学校女子硬式野球部のコーチに就任します。

プロ選手となることを強く意識するようになったのは、2012年にカナダで開催された第5回IBAF女子ワールドカップに出場した際のことです。そこで目の当たりにしたプロ選手のレベルの高さに感銘を受け、自身もプロの舞台で挑戦したいという強い思いを抱くようになります。そして同年のトライアウトに挑戦し、合格を手にしました。

女子プロ野球リーグでの軌跡と新たな挑戦

2013年から日本の女子プロ野球リーグ（JWBL）でプロキャリアをスタートさせます。最初の2年間（2013年～2014年）はレイアに所属し、その後2015年から2019年まではディオーネの主力投手として活躍しました。その間には、2013年に最多奪三振のタイトルを獲得し、2014年にはIBAF女子ワールドカップでMVPに輝くなど、数々の実績を残します。また、2016年にはJWBLの最優秀選手に贈られる角谷賞を受賞するなど、リーグを代表する投手としての地位を確立しました。

2019年シーズン終了後、JWBLを退団。しかし、野球への情熱が冷めることはありませんでした。2020年4月に創設された埼玉西武ライオンズ・レディースに入団し、再び硬式野球の舞台でプレーを続けます。選手活動と並行して、野球の普及・発展にも力を入れ始めます。2021年には一般社団法人「野球はみんなのスポーツ」を設立し、野球がより多くの人々にとって身近で楽しいスポーツとなるよう活動を展開。2023年には自身のファンクラブを立ち上げるなど、ファンとの交流も大切にしています。また、野球塾を開き、マンツーマンでの指導を通じて次世代の育成にも貢献しています。

近年は、その活動の場をさらに国内外へと広げています。世界の女子野球選手に焦点を当てたドキュメンタリー映画「See Her Be Her」に出演し、2024年にはその公開イベントのために渡米しました。同年9月には、メジャーリーグベースボール（MLB）の公式戦（パドレス対アストロズ）で始球式の大役を務め、日本人メジャーリーガーであるダルビッシュ有投手と松井裕樹選手との共演も話題となりました。さらに、2026年にアメリカ北東部で始動が予定されている新しい女子プロ野球リーグにおいて、特別アドバイザーに就任することが報じられるなど、米国野球界との関わりも深めています。

そして2025年、里氏のキャリアに新たな歴史が刻まれることが発表されました。カナダの独立リーグであるインターカントリー・ベースボール・リーグ（IBL）に所属するトロント・メープルリーフスと契約。これは同リーグにおいて初めての女性選手契約となり、大きな注目を集めています。契約期間は5月から8月までの4か月間ですが、北米の男子プロ野球リーグでプレーするという、まさに挑戦的な一歩となります。

選手としての特徴と評価

投手としての最大の武器は、120キロを超える力強い速球と、鋭く変化するカーブです。特にカーブは、メジャーリーグで活躍するクレイトン・カーショウ投手のそれを超える回転数とも評されるほど、その質は非常に高いとされています。最も尊敬する投手として、前述のMLBで活躍するダルビッシュ有投手の名を挙げています。

JWBL時代に記録した数々の記録やタイトルが、里氏の突出した投手能力を物語っています。プロ初登板での完投、初奪三振、初勝利、初安打といった記録をはじめ、JWBLでは通算400奪三振を達成しています。2013年の最多奪三振、2014年ワールドカップMVP、2016年の角谷賞受賞は、彼女が国内外で高い評価を得ていたことの証明と言えるでしょう。

また、自身のルーツである奄美大島への愛着も深く、イベント時には奄美の伝統工芸品である大島紬を身につけるなど、故郷のPRも積極的に行っています。

長年にわたり女子野球界を牽引してきた里綾実氏。選手としての挑戦を続けながら、指導、普及活動、そして国内外の新たな舞台へとその活動範囲を広げ、女子野球の発展に貢献し続けています。
います。

主な代表歴

第4回 IBAF女子ワールドカップ
第5回 IBAF女子ワールドカップ
第6回 IBAF女子ワールドカップ
2016 WBSC女子野球ワールドカップ
2018 WBSC女子野球ワールドカップ
2024 WBSC女子野球ワールドカップ

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