里見脩二

里見脩二：白い巨塔における良心と葛藤

里見脩二は、山田風太郎の小説『白い巨塔』および、それを原作とする数々のドラマ作品に登場する、架空の医師です。国立浪速大学病院第一内科助教授として、主人公である財前五郎と同期であり、終生のライバルとして物語の中核を担っています。

研究一筋の医師

大阪市出身の里見は、財前とは対照的に出世欲に乏しく、純粋に研究に打ち込む学者肌の医師です。権力闘争には関心がなく、患者の命を救うことに全力を注ぎます。日々の臨床を通して、患者の苦しみを目の当たりにし、病理学教室から第一内科へ転科するも、その研究への情熱は変わることはありません。

家族と家庭

幼い頃に父を亡くし、大学卒業間近には母も亡くすという辛い経験を背負っています。一回り以上年の離れた兄、清一がいます。妻の三知代と息子の好彦との3人家族で、法円坂の公団住宅に暮らしています。原作では三知代の父は解剖学者で名古屋大学医学部長の羽田融という設定でしたが、2003年版のドラマでは里見が三知代の父の担当医だったという設定に変更されています。

佐々木庸平医療裁判

里見は、佐々木庸平の初診を担当します。検査結果に疑問を抱き、財前に診断を依頼しますが、受け入れられません。手術後、患者の容態が悪化し、癌性肋膜炎を疑いますが、財前は術後肺炎と断定し、海外出張に出かけます。佐々木が亡くなると、里見は遺族を説得し、病理解剖に同意させます。結果、死因は癌性肋膜炎だと判明し、遺族は財前を告訴します。

真実の証言と左遷

医療裁判で里見は、遺族側の証人として、ありのままの事実を証言します。その結果、鵜飼教授から山陰大学の教授職を斡旋されますが、これは事実上の左遷でした。大学病院の不条理な権力構造に失望し、大学を去ります。その後、大河内教授の紹介で近畿がんセンター第一診断部次長となり、癌の早期発見に尽力します。

控訴審と財前の最期

控訴審でも里見は証人として出廷し、遺族をサポートします。財前が敗訴直後に倒れると、里見は真っ先に駆けつけ、診察します。進行癌であることを発見しますが、真実を伝えることができず、財前の依頼で東貞蔵に手術を依頼します。手術は手遅れに終わり、里見は最後まで財前を支え、最期を看取ります。

各ドラマにおける里見脩二

1978年版では、医療裁判で証言後、近畿がんセンターに勤務。財前の死後、解剖には立ち会いませんでした。2003年版では、山陰大学保健センター教授に左遷され、その後千成病院内科医長として再就職し、緩和ケアなどに従事。財前の死を看取り、大学からの就任要請を断っています。2019年版では、関西がんセンター先端医療研究所医師として再就職し、研究に専念。財前の死を看取り、その後、柳原や佐枝子を見送っています。

里見脩二という人物

里見脩二は、権力や出世には関心がなく、ひたすら患者のために尽くす、誠実で真面目な医師です。しかし、その愚直さが、彼を大学病院という権力闘争の渦中で孤立させることにもなります。彼の葛藤と苦悩は、医療現場の現実を浮き彫りにし、私たちに多くの問いかけを与えてくれます。彼は、白い巨塔の中で唯一、真実を貫き通す良心であり、その存在が物語に深みを与えています。クラシック音楽に造詣が深く、ベートーヴェンの音楽を愛聴しているという描写も、彼の繊細な一面を表しています。様々なドラマ版において、俳優陣による個性的な演技により、里見脩二像はより豊かに、そして複雑に描かれてきました。

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