財前五郎

財前五郎について

財前五郎（ざいぜん ごろう）は、山崎豊子の名作『白い巨塔』に登場する架空のキャラクターであり、物語の中心的な主人公です。彼は浪速大学医学部の出身で、医学博士号を取得し、大学病院の第一外科の助教授を経て教授へと上り詰めます。身長は約170cmで、筋肉質な体格を持つ彼は、傲慢さと上昇志向を内に秘めた強烈なキャラクターとして描かれています。

財前の人物像

財前は医師としての情熱が強く、特に外科医としての腕前は高く評価されています。彼は「財前式縫合」と呼ばれる胃の縫合法を考案し、臨床講義に熱心に取り組む一方で、傲慢な態度が次第に彼の人間関係を蝕んでいきます。教授に就任してからも、周囲の忠告に耳を貸さず、結果として同僚の佐々木庸平を死亡させてしまい、医療裁判に巻き込まれる羽目になります。

教授に就任後、彼は仕事の雑務に追われ、医局員を単なる票集めの道具として扱うようになり、次第に人間味を失っていきます。しかし、彼はその中でも手術の基本を忘れず、手術中に鼻歌を歌いながらイメージトレーニングを行う姿が描かれています。原作では愛情深い家庭人としての側面も描かれていますが、映像化の際にはその部分が省略されています。

家族と友情

財前は岡山県和気郡に生まれ、母は黒川きぬです。父が早逝したため、母の内職を助けながら育ちながら高等学校に進学。郷里の医師からの支援を受けて浪速大学医学部に入学しました。彼は自身の成績向上を図りながら、晩婚ながらも杏子という妻を持ち、二人の息子への愛情は深いものでした。

また、大学時代の同級生である里見脩二とは、互いに良きライバルであり理解者ですが、進む道は対照的です。財前は医師としての道を進む中で、彼らとの友情も大切にしていました。財前の愛人、花森ケイ子との関係は、彼の人間性の複雑さを物語ります。

教授選と医療裁判

財前は食道噴門癌を専門にしており、その技術は師である教授東貞蔵を凌ぐとも言われています。彼の教授就任は周囲から期待されていたものの、彼の傲慢な行動が同僚たちを敵に回し、教授選挙では派閥争いが激化します。義父や後援者の政治的工作により、辛うじて教授職を手に入れますが、その裏側には多くの敵が潜んでいます。

その後、自己の患者が亡くなったことを受け、医療裁判に巻き込まれます。一審での勝訴から一転して控訴審で逆転敗訴となると、彼は自らの過信と責任を問われることになります。

財前の最期

最終的に彼は病に侵され、自らの病名を知ることに至ります。周囲の懸念から真実を隠され続けますが、手術を受けた後に初めて理解します。医師としての矜持を保とうとしつつ、痛みを抱えながら亡くなる彼の姿は非常に感動的です。

手紙とそのメッセージ

彼が死に際して残した手紙には、「癌治療の第一線にあるものが早期発見出来ず、手術不能の癌で死す事を心より恥じる」という深い無念が綴られています。彼のキャラクターは、医師としての矜持と人間関係の難しさ、そして運命に翻弄される姿が intertwine しており、観る者に深い印象を残します。財前五郎の物語は、医療の現場とその倫理、そして人間の弱さを描いた秀逸な作品です。

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