里見軌道

里見軌道の歴史と概要

里見軌道（さとみきどう）は、群馬県の高崎市に位置した人車軌道で、その運営会社によって運営されていました。この軌道は主に安山岩の輸送を目的としており、特に建築資材として用いられる石を中心に扱っていました。

背景と設立経緯

群馬県は安山岩が豊富に産出される地として知られ、里見村では「里見石」と呼ばれる資材が採掘されていました。このため、1896年に西毛馬車鉄道が計画されたものの、実現には至りませんでした。その後、1913年には中野軌道の計画が立てられましたが、特許が得られなかったため新たな動きが求められました。

1914年8月1日、里見村の村長松田謹一郎らによって里見軌道の特許が出願されました。出願された路線は中野軌道と非常に似ていましたが、終点を変更することで建設費を抑え、特許の適用を受けることができました。1915年5月6日に特許が承認され、1916年11月22日、正式に里見軌道が設立されました。

会社と経営者

その初代社長は井上保三郎で、彼は高崎板紙や井上工業など、他の事業にも関与していました。また、この時期には烏川水力電気の社長でもあり、里見軌道と協力して護岸工事を行うなど、電力事業との結びつきを強めていました。

工事と運営開始

1919年には上里見村から新道までの工事が認可されましたが、環境要因で一部計画が失われる結果に。1920年、上州石材が設立され、経営層が重なることで、運搬を目的とした事業が展開されるようになります。

1921年には新道までの軌道工事が完了し、石材の輸送が開始されましたが、しばらくは監督機関への届出がなされていない状況でした。

書類上の開業と廃止

1931年、書類上では開業日が設定されましたが、わずか数ヶ月後の10月には一般運輸を取りやめ、専用線としての運用に変更されました。結果、1932年4月29日に全線が営業を廃止され、書類上は開業から約9ヶ月という短期間での廃止となりました。

その後、里見軌道の運営は不明瞭となり、上州石材に吸収されたとの見解が一般的です。上州石材自体も1940年に事業を停止し、1952年には清算が完了しました。

詳細なデータ

ストレートな輸送路を持った里見軌道は、営業距離が4.12km、軌間762mmで、全線が単線かつ非電化でした。発展の背景には、地域資源を活かした開発思考があったことが伺えます。圧倒的なスピードで変化する時代の中で、短命であった里見軌道もまた、地域の歴史と密接に結びついた一つの事例として語り継がれています。

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