重森弘淹

重森 弘淹（しげもり こうえん）

重森弘淹は、日本の写真評論家であり華道家として知られており、1926年7月27日に岡山県上房郡に生まれました。彼は、著名な作庭家である父・重森三玲の二男で、名前はドイツの哲学者ヘルマン・コーエンに由来しています。若い頃には同志社大学の文学部に在籍しましたが、途中で中退し、写真界に足を踏み入れました。

来歴と活動

重森は、月刊誌『いけばな芸術』の編集長としてキャリアをスタートさせ、勅使河原宏などと共に新しいいけばなの表現を模索していました。また、岡本太郎や花田清輝が結成した「夜の会」や、安部公房による「記録芸術の会」にも参加し、芸術活動の広い視野を欠かさず、様々な表現形態を追求しました。

1955年以降、重森はカメラ雑誌を通じて写真評論の活動を始め、当時盛んなった「リアリズム写真運動」を批判的に捉えながら、細江英公や奈良原一高といった新たな写真表現を積極的に支持しました。彼は、ウィリアム・クラインやロバート・フランクの作品も紹介し、それにより日本の現代写真における重要な影響力を持つ存在となりました。

1958年には「東京フォトスクール」を創設し、1960年には東京綜合写真専門学校へと発展させました。教育機関として、彼は自身の写真に関する美学や批評の精神を教授し、多くの写真家の育成に力を注ぎました。

写真批評の体系化

1973年には、東京綜合写真専門学校の出版局から隔月刊誌『写真批評』を創刊し、1992年に亡くなるまで同誌の編集に貢献しました。重森は、日本写真批評家協会の会員であり、また東京綜合写真専門学校の校長、さらには多摩美術大学と武蔵野美術大学の客員教授としても活動しました。1993年には「重森弘淹顕彰会」が設立され、彼の名を冠した写真評論賞も行われました。

教育者としての影響

重森の考え方の根幹には「表現は作者の批評行為であり、それがなければ存在しない」という思想がありました。この考え方は東京綜合写真専門学校の理念として受け継がれており、彼の足跡を辿る多くの独自の視点を持つ写真家たちが育っています。

主要著書

彼の主要な著作には、1962年の『現代の写真』や1967年の『写真芸術論』、1972年の『写真の思想』、1974年の『カメラ・アイ 転形期の現代写真』、1980年の『現代のいけばな』などがあり、これらは彼の理論や実践を色濃く反映しています。また、1993年には『名作で辿る世界の写真史』が編纂され、氏の思想と知識の集大成が示されました。

重森弘淹は、1936年に亡くなるまで多くの表現者に影響を与え続け、その業績や理念は今なお日本の写真界で生き続けています。

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