重火器

重火器とは何か？その多義的な意味を解説

重火器とは、火器の中でも比較的大型なものを指し、小火器と対比される概念です。しかし、重火器には一般的に受け入れられる明確な定義が存在せず、その意味は文脈によって異なります。この記事では、重火器の様々な定義について解説します。

様々な定義

防衛省の規定:

防衛省では、火器を口径20mmを基準に分類し、20mm未満を小火器（銃器、銃）、20mm以上を火砲（砲、砲熕武器）と定義しています。この区分では、重火器という概念は用いられていません。
帝国陸軍歩兵操典:

帝国陸軍の歩兵操典（昭和15年）には、重火器の明確な定義はありませんでした。しかし、歩兵の前進運動時に兵とともに前進する火器を小銃、軽機関銃、擲弾筒、手榴弾とし、それ以外の火器を砲兵と重火器に分けていたことから、重機関銃や歩兵科所属の小型砲（歩兵砲、対戦車砲）が重火器として扱われていたと考えられます。また、砲兵科扱いの重砲は除外されていました。
米国陸軍:

米国陸軍の規格では、重火器を「迫撃砲、榴弾砲、砲、重機関銃、無反動砲であって、通常歩兵装備の一部とされるもの」と定義しています。歩兵装備ではない重砲などは除外されます。
一般的な定義:

一般的には、地上部隊が使用する火器のうち、砲兵などの専門兵科が運用するものを指すことが多いです。具体的には、榴弾砲、カノン砲、臼砲、地対地ミサイル、地対空ミサイル（個人で携行できるものを除く）などが該当します。

その他の事例

自衛隊の海外派遣:

自衛隊の海外派遣に関する議論において、自衛隊が携行する武器を小火器に限定するという文言から、「小火器とは何か」という議論が起こりました。結果的に、重機関銃、迫撃砲、携帯対戦車ロケット砲などが携行できないことになり、これらが重火器として扱われることになりました。
ヴェルサイユ条約:

第一次世界大戦後のドイツは、ヴェルサイユ条約で重火器の保有を禁止されました。当時の重火器とは大砲を指し、現代では重火器に分類されるミサイルは未知の技術であったため、禁止対象に含まれていませんでした。このため、ドイツはミサイルの研究に取り組み、V2ロケットなどの弾道ミサイルの実用化に成功しました。

このように、重火器の定義は時代や文脈によって変化します。重火器という言葉が使われている状況を考慮し、その意味を正確に理解することが重要です。

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