重装輪回収車

重装輪回収車の概要

重装輪回収車（じゅうそうりんかいしゅうしゃ）は、陸上自衛隊が装輪装甲車両の回収と整備を効率的に行うために特別に設計された車両です。この車両は、陸上自衛隊が1980年代以降に装輪装甲車の運用を拡大していく中で、行動不能になった車両の整備・回収方法の改善を求められたことから開発が進められました。

導入の背景と開発理由

陸上自衛隊の装輪装甲車両の増加に伴い、既存の回収車両ではその多様なニーズに応じきれない事態が生じました。特に、これらの装輪装甲車両は高速で行動するため、万が一故障や損傷を受けた場合の迅速な回収能力は非常に重要です。しかし、従来の回収車両にはその整備や牽引能力が不十分であり、海外製の回収車両の中にも十分な性能を備えたものは存在しませんでした。

要求される性能

重装輪回収車は、以下のような高い性能基準が求められます。

• - ウィンチ能力: 地形に落ちた車両を引き上げるための能力。最大牽引力は約15トン以上。
• - 吊上げ牽引能力: 走行不能な状態の車両を吊り上げながら牽引する能力。最大荷重は約6トン以上。
• - クレーン能力: 車両整備時に大型部品を吊り上げるため、最大吊上げ荷重は約10トン以上。
• - 機動性能: 装輪装甲車両と同等の機動力を持ち、路上の最高速度は約100km/hです。

最終的に、重装輪回収車は平成14年に制式化され、初年度の調達にかかる費用は約1億4500万円とされています。

複雑な構造と装備

重装輪回収車は、全長約11メートル、全幅約2.5メートル、全高約3.4メートルを誇る大型車両で、24.8トンの車両重量を持ちます。前四輪で操舵し、後方にはクレーン、吊り上げ牽引装置、ウインチの各施設が設置されています。これらの装備が揃っていることで、特に装輪装甲車両のエンジンや砲塔の交換、または転落した車両の迅速な回収が可能となります。

既存回収車両との比較

陸上自衛隊が従来使用していた回収車両は、その多くが戦車ベースの装軌式で高価だったり、走行性能において不利な点があることが多かったため、重装輪回収車の必要性がさらに明白になりました。また、これら既存の車両では、走行不能車両の輸送に別途トレーラーが必要になるケースもありました。

派生型の展開

重装輪回収車はそのサイズと性能を活かして、他のさまざまな装備の車両としても利用されています。このような「ファミリー化」によって、03式中距離地対空誘導弾システムや12式地対艦誘導弾システムなどの装備の運搬や整備支援にも幅広く役立った結果、陸上自衛隊の作戦能力向上に貢献しています。

まとめ

重装輪回収車は、陸上自衛隊の装輪装甲車の効率的な運用を支える重要な車両です。高い性能基準と複合的な機能を備えたこの車両は、自衛隊の様々な活動に欠かせない存在となっています。今後も、その高度な技術と機能を活かし、新しい運用形態に対応することが期待されています。

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