野いちご (映画)

『野いちご』

『野いちご』（スウェーデン語: Smultronstället、英語: Wild Strawberries）は、1957年に公開されたスウェーデンの映画であり、イングマール・ベルイマンが監督を務めました。この作品は、授与式へ向かう老教授の一日を描写し、彼の心の中の悪夢や追憶を巧みに織り交ぜています。タイトルの「Smultronstället」は「野いちごのある場所」と訳される一方で、「一人静かに過ごすことのできる幸せな場所」という深い意味合いも持っています。

概要

ベルイマンは、これまでの成功作である『夏の夜は三たび微笑む』や『第七の封印』により国際的に名声を得て、製作会社から多大な支持を受けながら『野いちご』を完成させました。この映画は、老い、死、家族といった普遍的なテーマを扱っており、多くの視聴者に共感を呼ぶ作品として高く評価されています。

主役にはスウェーデン映画界の大御所、ヴィクトル・シェストレムが起用されました。シェストレムのキャスティングは、製作会社の後押しにより実現し、撮影中には多くの困難が伴いましたが、彼の演技は後に広く称賛を受けました。シェストレムは本作によって、ベルリン国際映画祭の国際批評家連盟賞やナショナル・ボード・オブ・レビュー賞の主演男優賞を獲得しました。また、彼が本作品に出演したことで、彼の最後の映画出演作となりました。

公開後、『野いちご』は多くの批評家から絶賛を受け、ベルリン国際映画祭で金熊賞、ゴールデングローブ賞の外国語映画賞など多数の映画賞を受賞しました。日本でも評価が高く、1962年度のキネマ旬報外国語映画ベスト・テンで第1位に選ばれるなど、その人気は衰えません。

ストーリー

物語は、老教授イサクが名誉学位を授与されることになった日から始まります。彼の人生の功績を称える授与式は栄光の瞬間であるはずでしたが、前夜に見た悪夢が影を落とします。イサクは執り行われる式の場へ向かう途中、義理の娘であるマリアンヌとともに自らの過去を振り返る旅に出る決意をします。

途中、イサクは様々な人物と出会います。夢のような思い出の中から、かつて婚約者を弟に奪われたことや、妻が不貞に走った理由を思い出します。そして、彼の息子エヴァルドとマリアンヌの間に子供がいないのは、イサク自身の影響があると語られます。一見成功した研究者としての公私を持つイサクですが、彼の心の奥には空虚さが残っているのです。

それから、彼はヒッチハイカーの少女や喧嘩を繰り返す夫婦、そして故郷を想い慕う人々とのふれあいを通じて、徐々に自分自身を再発見していきます。授与式後、イサクは息子と家造りを真摯に語り合い、新たな希望を見出します。彼は夜、静かな充満感を得ながら眠りにつくのでした。

キャスト

• - ヴィクトル・シェストレム：イサク教授
• - ビビ・アンデショーン：サーラ
• - イングリッド・チューリン：マリアンヌ
• - グンナール・ビョルンストランド：エヴァルド
• - マックス・フォン・シドー：ヘンリク・アケルマン
• - グンネル・リンドブロム：シャルロッタ

トリビア

この映画の脚本は、ベルイマンが入院中に執筆したものであり、当時彼は多くの私生活の問題を抱えていました。その影響が作品のテーマに色濃く反映されていると言われています。また、シェストレムは撮影時78歳という高齢で健康に不安があり、台詞を忘れることもありました。こうした彼の身体的な制約は、製作の過程にも影響を与えました。

『野いちご』は、永遠のテーマである人の生と死を深く掘り下げた作品として、今も多くの人々に愛されています。

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