野口冬人

野口冬人：日本の温泉文化に多大な貢献をした旅行作家

野口冬人（のぐちふゆと、1933年2月27日-2016年12月13日）は、日本の旅行作家、温泉評論家、そして民俗研究家として広く知られています。本名は野口邁（のぐちつとむ）。東京都生まれで、東京都立石神井高等学校卒業後、山の雑誌や旅のガイドブック編集に携わったのち、現代旅行研究所代表取締役を務めました。

野口氏の活動は、温泉に深く関わるものでした。『読売旅行』などの媒体で温泉に関する連載を多数執筆し、精力的に執筆活動を続けました。1965年から旅行作家としての活動を本格化させ、国内の約3300か所もの温泉を踏破。その経験に基づき、独自の視点で評価した「全国露天風呂番付」を作成し、大きな話題となりました。

温泉への造詣の深さは、単なる観光にとどまりません。野口氏は、温泉の適正利用と普及啓発にも積極的に取り組みました。その功績は高く評価され、2004年には環境大臣から温泉関係功労者表彰を受賞しています。

彼の活動は、著作物にも表れています。代表的な著書には、『湯治の宿』『効能別 全国温泉めぐり』『全国温泉大事典』『からだにいい湯治の旅』などがあります。これらの著作は、多くの読者に温泉の魅力を伝え、日本の温泉文化の理解を深めるのに貢献しました。また、『書斎のビバーク』のような、山と旅に関する著作も残しています。

野口氏の温泉への情熱は、各地に設立された資料室にも見て取れます。2008年には大分県長湯温泉に「林の中の小さな図書館」、2009年には岡山県湯原温泉に「野口冬人記念資料室」、そして2015年には静岡県観音温泉に「野口冬人『温泉・山・旅』資料室」が開設されました。これらの資料室には、野口氏が収集した膨大な旅と温泉に関する資料が寄贈され、現在も公開されています。

旅行作家の会代表、日本山書の会、山村民俗の会会員、NPO法人健康と温泉フォーラムへの参加、さらには南会津山の会の会員としての活動など、多岐に渡る活動を通して、彼は日本の文化と自然への深い愛情を示しました。

2016年12月13日、前立腺癌のため83歳で死去しました。日本の旅行文化、特に温泉文化に多大な貢献を果たした野口冬人の功績は、今もなお人々の記憶に刻まれています。彼の残した著作や資料室は、後世へと続く貴重な遺産と言えるでしょう。

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