野坂実

野坂実（のさか みのる）

日本の劇作家、演出家。福井県に生まれ、関西の大学へ進学するまでは演劇に触れる機会はほとんどなかった。将来の道を模索する中で、友人の勧めを受け、加藤健一事務所俳優研究所に入所。ここで演劇の基礎と俳優としての研鑽を積んだ。

1998年に同俳優研究科を修了した後、2002年には文学座と加藤健一事務所の卒業生を中心とした劇団「クロカミショウネン18」を立ち上げた。野坂は主宰として、劇団の全作品において脚本と演出を一手に担った。意欲的な作品を小劇場を中心に上演し、中でも第13回公演『祝/弔』では動員2000人を突破するなど、着実に実績を積み重ねた。しかし、この劇団は2012年に活動を終えることとなる。

劇団活動と並行して、野坂は外部での評価も高めていった。2004年には『モザイク』で佐藤佐吉賞脚本部門優秀賞を受賞。翌2005年にはパルテノン多摩小劇場フェスティバル最優秀作品賞に輝き、その才能が認められる。2007年にはフジテレビ主催の演劇イベント「お台場 SHOW-GEKI城」にてフジテレビ推薦作品として自作が上演された。

2008年にはテレビ東京が主催する公演『ガンまげ』（紀伊國屋ホール）の演出に抜擢され、演出家としても大きな注目を集めた。以降、外部からの依頼が増加。2009年には三宅裕司率いる劇団スーパーエキセントリックシアター30周年記念公演『ステルスボーイ』の脚本を、2011年には東京グローブ座プロデュース作品『トラベリング』（主演：佐藤アツヒロ）の作・演出を手がけるなど、活躍の場を広げていった。また、海外戯曲の上演を目指すユニット「FAKE STAR」を立ち上げるなど、活動は多様化していく。

クロカミショウネン18解散後も、野坂は様々な形で演劇活動を継続・発展させていく。2013年には声優の豊口めぐみと演劇ユニット「東京ジャンケン」を結成し、アラン・エイクボーン作品や朗読会などを上演。同年には脚本家の土城温美らと共に、劇場以外の場所で観客参加型の実験的な公演を行うユニット「アクトパスガーデン」も始動させた。ホテルや遊園地など、ユニークな空間を活かした作品づくりは話題を呼んだ。

さらに2015年には、声優の水島裕、山寺宏一と共に演劇ユニット「ラフィングライブ」を共同主宰。レイ・クーニー作のコメディ作品を中心に、声優陣の新たな一面を引き出す舞台を上演し、好評を博している。

そして2021年からは、自身が中心となり、世界中の名作ミステリーを舞台化するプロジェクト「ノサカラボ」を始動させた。コナン・ドイルのシャーロック・ホームズシリーズ、モーリス・ルブランのアルセーヌ・ルパンシリーズといった古典から、江戸川乱歩、高木彬光、アガサ・クリスティ、東野圭吾、我孫子武丸といった国内外の著名な作家の作品まで、多彩なミステリー作品を独自の構成・演出で舞台化している。このプロジェクトでは、山寺宏一、水島裕、関智一、木村良平といった人気声優に加え、俳優、アイドル、宝塚歌劇団OGなど、様々なジャンルの実力派キャストを積極的に起用しており、そのコラボレーションも大きな魅力となっている。朗読劇からストレートプレイまで、幅広い形式でミステリーの魅力を掘り下げている。

外部公演の演出家としても精力的に活動しており、ヘロヘロＱカムパニーや劇団クロジといった団体への参加に加え、SHY BOYプロデュースによるジャニーズ事務所（現：SMILE-UP.）所属タレント主演作品や、商業演劇、朗読劇、音楽劇など、そのフィールドは多岐にわたる。原作ものからオリジナル、海外戯曲まで、作品ジャンルも様々であり、それぞれの特性を最大限に引き出す演出手腕を発揮している。

劇団主宰、多様なユニット活動、そして外部での豊富な演出実績を通じて、野坂実は日本の演劇界において、特にミステリー作品の上演や異ジャンルの才能とのコラボレーションなど、独自の立ち位置を確立している劇作家・演出家と言えるだろう。

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