野坂相如

野坂 相如（のさか すけゆき）は、明治32年（1899年）1月19日に生まれ、昭和53年（1978年）に没した日本の土木技術者、そして都市計画の専門家です。

生涯と初期キャリア

野坂相如は、東京に野坂豁の八男として生を受けました。学業においては優秀で、府立第一中学校、旧制第一高等学校を経て、1923年に東京帝国大学工学部土木工学科を卒業しました。

大学卒業後、東京市に入庁し、電気局に配属されます。ここでは、当時まだ計画段階にあった地下鉄の建設計画に深く関わりました。

内務省での活躍

1934年、野坂は内務省に移籍します。都市計画地方委員会の委員として群馬県に勤務した後、1936年には神奈川県へ転任し、都市計画神奈川地方委員会で職務を続けました。神奈川県では、1939年に技師としては初めて都市計画課長という要職に就任します。彼は、横浜市や当時の郡部であった相模原を含む神奈川県内の主要都市で、街路の整備や大規模な土地区画整理といった重要な都市計画事業の推進に多大な貢献を果たしました。

地方での経験と副知事就任

内務省での功績を積んだ後、1942年には富山県土木課長に就任。続いて1946年には新潟県土木部長へと転出し、地方行政の実務経験を重ねました。

戦後間もない1947年、野坂は新潟県で最初の民選知事となった岡田正平の下で、全国の技官として先駆けて副知事に抜擢されるという異例の人事を受けます。副知事として彼は、特に只見川の電源開発を巡って福島県や政府との間に生じた複雑な問題に対し、交渉の最前線に立って解決に尽力しました。

議会での機知と政界への挑戦

新潟県副知事時代には、彼の機知に富んだ一面を示すエピソードが伝えられています。墓地移転問題を巡る県議会での審議が紛糾し、収拾がつかなくなりかけた際、野坂は立ち上がり「議案は墓地のことである。墓々（はかばか）しくいかないのは当然。まア墓地墓地（ぼちぼち）審議しましょう」と洒落を飛ばし、場の緊張を解きほぐして円滑な議論へと導いたといいます（青木一雄著『「とんち教室」の時代』より）。

1955年、岡田知事が3選を目指した選挙で落選したことを受け、野坂も副知事の職を辞しました。その後、岡田の落選に伴う参議院議員の補欠選挙に無所属で立候補しましたが、残念ながら当選には至らず、政界からは身を引くこととなりました。

晩年と家族

政界を離れた後は、NHKのラジオ番組「とんち教室」にセミレギュラーとして出演し、創作の洒落た小噺を披露するなど、その多才ぶりを発揮しました。

野坂相如は、直木賞作家として知られる野坂昭如の父です。また、孫には作家・エッセイストの野坂麻央、そして女優の愛耀子（いずれも元宝塚歌劇団娘役）がいます。

主な著書

彼の著作としては、『都市の交通と地下鉄道』（1930年）、共著による『土木建築構造力学（上・中・下巻）』（1927年 - 1931年）といった専門書に加え、晩年には『父相如と子ども昭如との対話』（1970年）、『笑わせ屋入門』（1970年）などがあります。

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