野尻バイパス

野尻バイパス（のじりバイパス）は、長野県上水内郡信濃町内を南北に縦断する国道18号において、現在整備が進められている重要な道路改良事業です。このバイパスの計画は、地域が抱える長年の交通課題を解決し、より快適で安全な通行環境を確立することを目的としています。

計画の背景と目的

対象となる国道18号の既存区間は、特に冬期間に降雪量が多く、積雪によって道路の有効幅員が狭まり、しばしば交通の障害となっていました。また、一部には勾配がきつい箇所があり、大型車両などの通行に負荷がかかっていました。さらに、近隣に位置する野尻湖は有数の観光地であり、夏期を中心に多くの行楽客が訪れるため、周辺道路で著しい交通渋滞が発生していました。加えて、歩行者が安全に通行できる空間が不足しているという課題も存在しました。

野尻バイパスの建設は、これらの問題を抜本的に解決するために立案されました。具体的な目的としては、冬期の大量の積雪に対応できる十分な幅（堆雪帯）を持つ道路構造の確保、既存ルートの急勾配を避ける新たな線形の採用、そして歩行者の安全性を高めるための歩道整備が挙げられます。これにより、年間を通じて安定した交通を確保し、特に夏の野尻湖周辺の交通混雑を緩和することで、地域経済の活性化や住民生活の質の向上に貢献することを目指しています。また、この事業は上信越自動車道の信濃町インターチェンジへのアクセスルート改良という側面も持ち合わせており、「野尻IC関連」事業と呼ばれることもあります。

路線の概要

野尻バイパスとして計画されている区間は、長野県上水内郡信濃町の古間を起点とし、同町の野尻を終点とする、総延長8.7キロメートルにおよぶルートです。道路の技術的な規格は第3種第2級に分類されており、設計上の最高速度は時速60キロメートルとされています。道路全体の幅員は17.0メートルで、そのうち実際に車両が通行する車線部分の幅員は片側3.5メートル、全体として上下線合計2車線で設計されています。この事業は、既存の国道を改良する現道改良区間と、新たに道路を建設するバイパス区間を組み合わせて構成されています。

事業の経緯と現状

野尻バイパスの整備事業は、1980年代後半に始まり、段階的に進められてきました。最初の重要な節目は1985年度（昭和60年度）8月で、終点側にあたる信濃町野尻地区の約2.5キロメートル区間が都市計画として決定されました。その後、1989年度（平成元年度）には事業化がなされ、計画が本格的に動き出します。1990年（平成2年）8月には、残る信濃町野尻から起点側の古間までの約6.2キロメートル区間についても都市計画決定がなされ、事業全体のルートが確定しました。

用地取得は1993年（平成5年）に始まり、1994年（平成6年）には建設工事に着手すると同時に、埋蔵文化財の調査も実施されました。以降、工事が進められた区間から順次開通しています。1997年（平成9年）10月には、上信越自動車道の信濃町ICの開通に合わせて、バイパスと現道を結ぶ約0.8キロメートル区間が先行して供用を開始しました。既存国道の拡幅改良も進められ、1999年度から2001年度にかけて、合計約1.1キロメートルの現道区間が改良されました。バイパス区間の主要構造物である野尻トンネル（延長200メートル）を含む約1.4キロメートルの区間は、2003年（平成15年）7月に供用が始まりました。さらに、起点側の線形改良区間である信濃町古間地区の約1.0キロメートルも改良が進み、2017年（平成29年）11月29日に開通しました。

2021年現在、総延長約8.7キロメートルのうち、信濃町IC付近から野尻湖にかけての約3.3キロメートル区間と、起点側の古間地区の約1.0キロメートル区間を含む一部が既に完成し、供用されています。未開通区間についても引き続き整備が進められています。

主要構造物と沿線施設

野尻バイパスのルート上には、いくつかの主要な構造物が設けられています。特に、バイパス区間には延長約200メートルの野尻トンネルがあります。このトンネルは1999年度に着工され、2003年度に完成・供用開始されました。

また、バイパスの整備区間沿いには、ドライバーや利用者の休憩・情報提供施設として機能する道の駅「しなの」が立地しており、地域の玄関口としての役割も担っています。

通過自治体と主な接続道路

野尻バイパスは、長野県上水内郡信濃町のみを通過します。

ルートの周辺や交差する地点では、地域の主要な道路網と結ばれています。これには、既存の国道18号線、長野県道364号古間停車場線、長野県道36号信濃信州新線、長野県道119号杉野沢黒姫停車場線（改良前の旧道ルートおよび新たなバイパスルート）、そして上信越自動車道へのアクセスとなる信濃町ICが含まれます。終点側では、野尻湖周辺の町道（国道18号旧道）や長野県道360号古間停車場野尻線と接続し、さらに新潟方面へ続く国道18号（妙高野尻バイパス）へと繋がっています。これらの接続により、地域内外の交通ネットワークにおける重要な役割を果たしています。

整備効果と今後

野尻バイパスの整備が進み、全線が開通することにより、冬期の交通規制の減少や急勾配による走行負担の軽減、夏季の観光シーズンにおける野尻湖周辺の渋滞緩和、そして安全な歩行者空間の提供など、多方面にわたる効果が期待されています。未開通区間の完成により、国道18号全体の信頼性向上と地域活性化への貢献がさらに進むことでしょう。

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