野戦酒保規程

野戦酒保規程について

概要

野戦酒保規程（やせんしゅほきてい）は、陸軍大臣によって定められた軍内の規則で、戦時における野戦軍に設置される酒保、すなわち物品販売所に関する規定です。この規程は1904年2月9日に制定され、その後何度かの改正を経て、1937年に全改正が行われました。具体的な背景や改正の意図については、戦時の部隊や戦況に応じた必要性があったため、見直しが図られました。

設定と改正履歴

初めに制定されたのは1904年のことで、日露戦争の真っ最中でした。そこから1937年にかけて、2度の重要な改正が行われています。特に1937年の改正は、新たに設けられた慰安施設についての規定を含むもので、実際には軍人や軍属のための気晴らしの場としての役割を担うことが目的とされていました。改正規程には、酒保に伴う「慰安施設」の設置が可能であるとの文言が含まれており、これにより軍の組織内での役割が大きく変わることとなります。

「慰安施設」の意義

京都大学教授の永井和によると、改正される前の第1条では「必要な慰安施設を設けることができる」とあり、酒保は物販だけでなく軍人のための憩いの場も提供できることが明記されていました。これは、軍内の飲食や他の物資の販売の枠を超え、軍人のレクリエーションを含む活動が公式に認められることを意味していました。

また、上海派遣軍の日記には、慰安施設についての詳細な記録が残っています。具体的には、慰安所を設置するための書類のやり取りや、女郎屋の設置依頼などがあり、このような紀録は、慰安施設が「女郎屋」として機能していたことを示しています。実際、隊員たちも酒保での「女給」と呼ばれる女性たちと関わる機会が多く、このことは当時の文化やシステムの重要な側面を浮き彫りにしています。

野戦酒保設置の権限

規程第3条に基づき、野戦酒保の設置は高等司令部や聯隊、大隊、病院、及び編制人数が500名以上の部隊に許可されていました。このように、大隊以上の部隊にのみ設置が許可されていたことから、統制が取られ、全体の運営が煩雑になり過ぎないように工夫されていたことがわかります。さらに、慰安施設の設置に関しても、担当大隊長による許可が求められ、その管理も彼らの責任のもとで行われていました。

管理と経営

野戦酒保の管理は、設置した部隊の長が担当し、経営は自前で賄うことが基本とされたが、必要に応じて長官の許可を得て委託経営が可能だったようです。このように、軍属として扱われることによって、業者と部隊が密接に関連していた様子が伺えます。また、必要な物資について、糧食や被服などの支給が認められていたことから、運営におけるハードルの一部が軽減される形となっていました。

まとめ

野戦酒保規程は単なる物販の規則ではなく、戦時の部隊における重要な社会的役割を担っていました。特に慰安施設というコンセプトは、当時の軍人にとって精神的な支えとなり、その運営はまた別の側面でも部隊の効率性に寄与していました。このような歴史の中で、規程がどのように形成されてきたかを理解することは、戦時における軍の精神面やその背景にある社会的な課題を考える上でも非常に重要です。

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