野村一里塚

野村一里塚の詳細

概要

野村一里塚は、三重県亀山市野村町に位置し、旧東海道の重要な目印でした。この一里塚は、江戸時代初期に築造された13カ所の一里塚の中で、当時の姿を最もよく保存している唯一の塚です。塚は、1934年に国の史跡に指定され、自己の貴重な文化遺産として地域にも深い意味を持っています。

地理

亀山市にある野村一里塚は、旧東海道沿い、野村町の西側に位置しています。この塚は江戸の日本橋から約418キロメートル、京の三条大橋からは約70キロメートルの距離にあります。1826年にはシーボルトがここを通り、塚の精度に感心している記録も残されています。

塚の直径は一般的に約10メートルですが、野村一里塚は約82平方メートルもあり、大型の塚として知られています。現在の塚の面積は約1.3アールで、高さは約3メートルです。そして、三重県内の12カ所の一里塚の中でもその原型を最も良く保持しているとされています。許された植栽は、通常エノキが選ばれますが、野村一里塚にはムクノキが植栽されています。

歴史

江戸時代

野村一里塚は、慶長9年（1604年）に徳川家康の指示により築かれ、江戸から京に至る東海道の目印として機能しました。一里ごとに塚が設けられ、旅人に方向を示す役割を果たしました。塚は南北それぞれに1つずつ置かれ、様々な樹木が植えられていました。

三重県内では、旧東海道沿いの桑名宿から坂下宿までの12カ所に一里塚が設けられ、その一つが野村一里塚です。伊勢亀山藩主のもとに築造されましたが、南の塚は1914年に取り除かれました。残る北側の塚にはムクノキが植えられていますが、幹が斜に伸び、周囲の建物に危険だったため、明治時代に幹を一部切断されました。

近現代の動向

1934年の国史跡指定を受け、翌年には塚の保護が行われ、石垣と鉄柵で囲われました。その後、管理が行き届き、町有地として補修され、外観が整備されました。現在でも保存状態は良好で、定期的に草取りや樹木医の診察を受けながら、市によって管理されています。

植物と文化

一里塚に用いる樹木に関して、三代将軍・徳川家光が応じたエピソードがあります。彼の《余の木を植えよ》という言葉を誤解した家老が、「エノキを植えよ」と指示したため、全国各地の一里塚にはエノキが植えられました。しかし、野村一里塚にはムクノキが植えられたため、両者の混同があったのではとも考えられています。実際、大正期に撤去された南の塚にはエノキが確認されていることから、北側の塚の風景も往年とは異なることが分かります。

現存するムクノキは、測定によれば、昭和初期には約5メートルの幹周りと20メートルの高さが記されており、その後、樹高が低下しています。最近の調査では樹勢の衰えが見つかり、治療措置が施されたこともあります。さらに2010年代には新たにエノキも育ち始め、塚周辺の植生はヒガンバナが美しく咲く場所となっています。

交通アクセス

本塚の所在地は、三重県亀山市野村町737-1で、車でのアクセスは東名阪自動車道亀山ICから約3分、公共交通機関ではJR亀山駅から徒歩15分～25分ほどの距離にあります。

周辺には、西野公園や休憩所、忍山神社などの 観光スポットがあります。特に忍山神社は地域の重要な神社で、例祭の「傘鉾」巡行では、野村一里塚が折り返し地点となります。

野村一里塚は、歴史の中で多くの旅人に愛され、記憶に刻まれた特別な場所であり、今も地域の文化の一翼を担っています。

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