野村正樹 (建築家)

野村 正樹

野村 正樹（のむら まさき）は、1970年（昭和45年）9月24日に京都市で生まれた日本の建築家です。株式会社ローバー都市建築事務所の代表を務め、その活動は多岐にわたりますが、中でも京都の伝統的な町家建築の再生に強い情熱を注いでいます。

建築家への道

野村氏は京都市の出身で、小学生時代を西陣地域で過ごしました。この時期に触れた町家の風景や暮らしの記憶が、後の町家再生への取り組みの原点となっています。同志社高等学校在学中に建築家を志し、同志社大学法学部で法律を学びながら、並行して京都建築専門学校でも建築の専門知識を修得しました。大学4年生時には建築設計事務所でのアルバイトも経験し、実務に触れています。

同志社大学卒業後、建築の専門性をさらに深めるため、京都工芸繊維大学造形工学科に編入学。卒業を前にした海外渡航では、フランスのラ・トゥーレット修道院の建築に深い感銘を受け、これが建築家として生きていく決意を確固たるものとしました。

キャリアの歩みと町家再生

京都工芸繊維大学卒業後、かつてアルバイトとして勤務していたNEO建築事務所に入所します。ここで最初に担当したプロジェクトは、阪神・淡路大震災で被災した住宅の改修でした。施主家族から寄せられた深い感謝の言葉は、その後の建築家としての活動における大きな原動力となったといいます。

2000年、勤務経験を経て独立を果たし、有限会社Rover都市建築事務所を設立しました。この頃、京都市内で次々と取り壊されていく町家の現状を目の当たりにし、これらを未来へ引き継ぎたいという思いを強くします。「町家クラブ」の活動への参加を機に、本格的に町家の改修を手掛けるようになります。

彼の町家再生における設計思想は、単に古民家を保存するだけでなく、現代のライフスタイルに合わせた機能性や快適性を加えることにあります。町家が持つ独特の「ぬくもり」や趣を最大限に活かしつつ、現代の暮らしに馴染む空間へと再生することで、貴重な伝統建築を次世代に残していくことを目指しています。この考えに基づき、町家や古民家再生、増改築、リノベーション、リフォーム、宿泊施設、注文住宅、オフィスビルなど、幅広い建築分野で活動を展開しています。

資格と公的活動

野村氏は一級建築士、インテリアコーディネーター、宅地建物取引士、古民家鑑定士一級といった多様な資格を有しています。また、建築家としての専門知識を活かし、公的な分野でも貢献しています。

長年にわたり京都市景観・まちづくりセンターの京町家専門相談員を務めたほか、京都造形芸術大学（現：京都芸術大学）で非常勤講師として後進の指導にあたりました。京都市都市計画マスタープラン審議委員や京都市みやこユニバーサルデザイン審議会審議委員といった要職を歴任。2023年からは京都市景観審査会委員を務め、古都・京都の美しい景観を守り育む取り組みに深く関わっています。2024年には（一社）京都府建築士会 理事に委嘱されるなど、建築業界の発展にも寄与しています。

受賞歴と著作・メディア

彼の建築作品は国内外で高く評価されており、京都景観賞（平成24、26、30年度に優秀賞や奨励賞）、第37回ディスプレイ産業賞【奨励賞】、カフェレスデザインアワード2022リノベーション部門、Best of Houzz サービス賞（2023年、2024年連続）など、数多くの賞を受賞しています。代表的な受賞作品には「ふたえ」「Art Space-MEISEI」「姉小路別邸」「麩屋柳緑」などがあります。

また、著作活動としてはPHP研究所より出版された共著シリーズに参加しています。2006年から2018年まで毎日新聞にコラム「きょうと空間創生術」を連載し、建築や空間に関する知見を広く発信しました。ラジオ番組への出演も多く、京都のコミュニティ放送やFM京都などで建築やまちづくりに関するトークを展開しています。

所属団体としては、京都府建築士会、京都経済同友会、日本建築家協会などに名を連ね、建築・経済界での活動も活発に行っています。

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