ラ・トゥーレット修道院

ラ・トゥーレット修道院：ル・コルビュジエ後期の傑作

フランスのリヨン郊外、丘の斜面に佇むラ・トゥーレット修道院は、20世紀を代表する建築家ル・コルビュジエが設計したカトリック・ドミニコ会の修道院です。聖母マリアに捧げられたこの修道院は、その禁欲的な外観と、光を巧みに取り入れた内部空間が特徴で、建築史における後期モダニズムの重要な作品として位置づけられています。

設計と建設

1953年に設計が開始され、1956年に着工、1960年に竣工したラ・トゥーレット修道院は、ロンシャンの礼拝堂と並び、ル・コルビュジエ後期の代表作として知られています。ロンシャンの礼拝堂が丘の頂上に曲線を用いて自由な造形を見せるのに対し、ラ・トゥーレット修道院は丘の斜面に沿うように、垂直と水平の直線だけで構成された禁欲的な矩形の外観が特徴です。この外観は、斜面の力を顕在化させ、力強い印象を与えています。

建築と数学を学んだ後、現代音楽の作曲家として名を馳せたヤニス・クセナキスが、ル・コルビュジエの弟子として設計に参画したことも特筆すべき点です。

現在、この修道院は修道会だけでなく、カンファレンスセンターとしても活用されており、その建築的価値は広く認められています。2016年には、ル・コルビュジエの他の16の作品とともに、ユネスコの世界遺産に登録されました。

建築の特徴

外観

修道院は4つの矩形の建物で構成され、その中央には四方を建物に囲まれた空間が広がっています。丘の端に位置するコンパクトな矩形の建物には聖堂と十字架が収められており、他の3つの棟はピロティによって持ち上げられ、生活空間や修道院のその他の機能が配置されています。批評家からは、その構造が駐車場に例えられることもあります。屋上テラスは1981年に復元されました。

内部

修道院は、ドミニコ会の修道士見習いと教師のための100の寝室、自習室、参事会室、娯楽室、食堂、図書室、そして教会を備えています。最下層には食堂と十字の形をしたペリスタイルがあり、傾斜をもって教会につながっています。勉強、参事、娯楽、図書館のためのホールは上階に配置され、修道士の個室は最上階にあります。各個室には、ル・コルビュジエが提唱したモデュロールが適用されており、ベッド、トイレエリア、机、そして広い風景を望むロッジアが備えられています。

パティオ

4つの棟に囲まれたオープンスペースは、一般的なパティオとは異なり、2つの垂直な廊下が合流することで4つのパートに分かれています。各パートには、異なる幾何学的な形が内包されています。

構造

建物の構造は鉄筋コンクリート造で、ル・コルビュジエが1914年に提唱したドミノシステムを採用しています。ヤニス・クセナキスが設計した4つの外面のうち3つには、起伏のあるガラス面（波動式ガラス壁）が用いられています。また、ル・コルビュジエが命名した「ブリーズ・ソレイユ（日除け格子）」も採用されており、自然光のコントロールに貢献しています。

光の活用

修道院の設計における重要な要素の一つは、光の活用です。自然の風景から聖域の内部へと徐々に進む道筋は、自然光の眺めというよりは図像的な表現を排除し、視覚的な現象を「外」から「内」へと連続的に取り除いています。複雑な風景は単純な幾何学的形状に還元され、最後には究極の光に還元されます。光は空間の中を自由に動き回り、鑑賞者を誘い、空間を体験させる役割を果たしています。特に、広いパブリックスペースや長い廊下に入る光の量をコントロールするために、垂直に波打つガラス板が効果的に使用されています。

エピソード

ル・コルビュジエは1965年8月27日、海水浴中の心臓発作によりこの世を去りました。彼の遺体は、ルーブル美術館の中庭で行われる国葬のために移送される途中、生前の本人の希望通り、ラ・トゥーレット修道院に立ち寄り、教会で一晩を過ごしました。興味深いことに、ル・コルビュジエ自身は無神論者であったとされています。その1週間後の1965年9月8日、修道院は歴史的記念物の目録に登録されました。

現在の状況

現在も修道院として機能していますが、修道士の数が減少したため、ロンシャンのように建築を学ぶ学生の巡礼地のような場所にもなっています。小修道院では、未使用の個室に一晩滞在することが可能で、その料金は修道院の維持費に充てられています。また、毎年、文化プログラム「Les Rencontres de La Tourette」や現代美術展が開催され、建築だけでなく、文化的な面からも注目を集めています。

アクセス

ラ・トゥーレット修道院は、リヨン市街中心部から西北西に約15kmの場所に位置しています。車でのアクセスは、リヨン・パリ道路（国道N7号）を使い、ラルブレル経由で約25kmです。公共交通機関を利用する場合は、リヨン中央駅から地方鉄道でラルブレル駅まで行き、そこからエヴー経由で約1.5kmです。

参考文献

『ル・コルビュジエ　ラ・トゥーレット修道院』写真・宮本和義／解説・栗田仁（バナナブックス、2007年）
『丘の上の修道院　ル・コルビュジエ 最後の風景』写真・范 毅舜／田村広子訳（六耀社、2013年）
『ル・コルビュジエ　ラ・トゥーレット修道院』（TOTO出版、1997年）
ルジオ・フェロ、シュリフ・ケバル、フィリップ・ポティエ、シリル・シモネ／中村好文監修、青山マミ訳

関連項目

ル・コルビュジエの建築作品

外部リンク

ラ・トゥーレット修道院（公式サイト）
La Tourette Monastery - Galinsky Building Site

もう一度検索