野村長平

野村長平の無人島漂流記

江戸時代に実際に起きた、野村長平の無人島での漂流生活。彼は1741年、土佐国岸本浦で生まれ、長い航海人生を送る船乗りでしたが、ある日、彼の運命は大きく変わります。1785年、土佐藩からの帰路、彼は船が嵐に遭遇し、無人の鳥島に漂着してしまいました。

漂流からの過酷な生活

船は冬の大西風によって舵や帆柱を失い、漂海の後、鳥島に達しました。当初は同僚の乗組員3人と共に生活していましたが、2年以内に彼らは次々と命を落とし、長平は孤独な生活を強いられました。

無人島での食料は主にアホウドリの肉や卵、少量の海産物を頼りにしました。火打石がないため、食事は生で食べることが多く、アホウドリの肉を乾燥させて保存し、繁殖期以外の食料確保に努めました。水は集めた雨水を利用し、アホウドリの卵殻に蓄えていたといいます。日々の生活の中で、彼は月の動きを観察し、年月を把握していました。長平は当時、想像を絶する困難な環境下でサバイバルを続けていました。

次なる仲間との出会い

3年後の1788年、長平の無人島生活も変わります。大坂から漂着した11人の船乗りと日向国から来た6人の漂流者が加わり、無人島生活者は合計18名となりました。彼らは共同で生活することを決め、食料確保や住居の整備を行いました。

当初の孤独から脱し、道具も整っていく中で長平は希望を持つようになりました。しかし、時は厳しく、1789年から1793年の間で4人が命を落としたこともあって、彼らは早く脱出する必要があると判断しました。長平は、漂着から数年が経過しても一隻の船も現れなかったため、遂に船の製作を決意します。

自給自足の造船

その後、漂流者たちは共同で造船に取り組みます。古い道具や流木を使い、衣類から帆を取り、島の北東部で実用的な船を作り上げるために、日々労働に励みました。彼らの努力の甲斐あって、ついに1788年から5年越しで約9メートルの船が完成します。

無人島脱出と帰還

1797年6月8日、14名の生存者は「無人島」を後にします。数日の航海を経て八丈島に辿り着き、ついに社会復帰を果たしました。江戸での調査を経て、長平は1798年1月19日に土佐へ帰還します。この時、故郷では彼の13回忌が行われていました。

土佐への帰還を果たした長平は、地元での名誉を得て、多くの人々に漂流の体験談を話しました。緊迫した無人島での13年間を経て、彼は充実した人生を送ることになります。

史跡・記念碑

現在、長平の墓碑は高知県香南市に存在し、香南市の史跡として保存されています。また、土佐くろしお鉄道香我美駅前には彼を称える銅像が設置されています。長平の物語は、時代を超えて人々に感動を与え、漂流の苦難を乗り越えた彼の精神を今に伝えています。

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