野村雅一

野村 雅一

野村 雅一（のむら まさいち、1942年9月8日- 2017年9月9日）は、日本の文化人類学者であり、国立民族学博物館名誉教授を務めた人物です。身体表現と文化というユニークな視点から、人間のコミュニケーションや社会活動の理解に貢献しました。

生涯と経歴

1942年、広島県に生を受けました。学問の道は京都大学文学部イタリア文学科から始まり、1966年に同大学を卒業。さらに学識を深めるため、同大学大学院文学研究科言語学専攻へ進み、1968年に修士課程を修了しました。

大学院修了後、京都大学人文科学研究所で助手としてのキャリアをスタートさせました。その後、南山大学の講師を経て、国立民族学博物館に助教授、教授として移籍し、長きにわたり研究・教育に携わりました。また、京都外国語大学外国語学部教授も務めるなど、教育機関において幅広く活躍しました。研究・教育活動に加え、2008年からの3年間は、総合研究大学院大学の理事・副学長として、大学運営の要職も担いました。

研究内容と業績

専門は文化人類学の中でも特に「身体表現と文化」という分野でした。人間の身体が示す身ぶりや、日常的なしぐさに着目し、それらが持つ多様なコミュニケーション機能から人間活動のあり方を読み解くことを試みました。言語だけでなく、非言語的な身体の動きが文化の中でどのように意味づけられ、人間関係や社会構造に影響を与えるのかを探求しました。

この分野における先駆的な研究成果は、数多くの著作として結実しています。主な単著には、『しぐさの世界：身体表現の民族学』（NHKブックス、1983年）、『ボディランゲージを読む：身ぶり空間の文化』（平凡社、1984年）、『身ぶりとしぐさの人類学：身体がしめす社会の記憶』（中公新書、1996年）などがあり、これらの著作を通じて、身体表現研究の重要性を広く社会に提示しました。また、鶴見俊輔氏ら、他の研究者との共編著も多数手掛け、学際的な視点からの研究交流も積極的に行いました。例えば、菅原和孝氏と共編の『コミュニケーションとしての身体』（大修館書店、1996年）や、鷲田清一氏と共編の『表象としての身体』（大修館書店、2005年）などがあります。

家族

夫人であるイタリア人女性のシルビアさんと結ばれました。長男の野村雅夫氏は、FM COCOLOのディスクジョッキーとして広く知られています。

野村雅一氏の研究は、人間の文化やコミュニケーションを理解する上で、身体という切り口の重要性を示すものであり、後進の研究者にも大きな影響を与えました。その功績は、国立民族学博物館名誉教授の称号として称えられています。

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