野生の眼/世紀末猟奇地帯

野生の眼/世紀末猟奇地帯

概要

1967年に公開されたイタリア映画『野生の眼/世紀末猟奇地帯』（原題：L'Occhio selvaggio）は、ドキュメンタリー映画製作の舞台裏、特にその欺瞞に焦点を当てた異色の作品です。パオロ・カヴァラが監督を務めたこの映画は、表面的な真実を追い求めるジャーナリズムや、センセーショナルな映像を偏重する当時の風潮に対し、鋭い皮肉を投げかけます。作品の中心となるのは、リアリティを追求するあまり、虚構やヤラセすら厭わない破滅的なドキュメンタリー映画監督の姿です。この監督のモデルは、衝撃的なドキュメンタリー「モンド映画」で知られるグァルティエロ・ヤコペッティであるとする説が有力視されており、実際に監督のパオロ・カヴァラ自身もヤコペッティ作品に関わった経験があるとされています。公開当時は単に『野生の眼』というタイトルでした。

この映画は、映画製作という行為そのものの倫理的な問題や、映像によって切り取られ、歪められる現実を描き出し、観る者に「真実」とは何かを問いかけます。単なる暴露映画ではなく、映画というメディアの持つ暴力性や、クリエイターの抱える業のようなものに深く切り込んだ、実験的な側面も持ち合わせた作品と言えるでしょう。

あらすじ

物語の主人公は、ドキュメンタリー映画監督のパオロです。彼は従来のドキュメンタリーの枠を打ち破り、世界に衝撃を与える「革命的」な作品を生み出すことに憑りつかれています。その飽くなき、しかし歪んだ探求心から、製作マネージャーのロッシに協力を仰ぎ、サハラ砂漠でのカモシカ狩りを題材とした撮影計画を立てます。この計画は、最初からヤラセの要素を含んでおり、サハラへ向かう途中で乗っていたジープが故障し、一行が過酷な徒歩移動を強いられる場面さえも、彼の綿密な計算のうちでした。

その後、パオロは若き女性カメラマン、バルバラを伴ってシンガポールのアヘン窟へと向かいます。危険な場所や倫理的に問題のある状況にも臆することなく踏み込んでいくパオロのやり方に、バルバラは次第に嫌悪感を抱き、辟易していきます。それでも彼女は、パオロの仕事に付き合い、タイやベトナムなど、様々な場所での撮影を続けます。

ある日、パオロはナイトクラブに爆弾が投げ込まれたという事件の情報を耳にします。センセーショナルな映像の予感に駆られた彼は、バルバラたちを連れてすぐさま現場へ急行します。そして、まさにその時、ナイトクラブで新たな爆発が発生し、バルバラが建物の崩落に巻き込まれて瓦礫の下敷きになってしまいます。瀕死の状態にあるバルバラを目の前にしてもなお、パオロの関心は「絵になる映像」を撮ることにありました。彼は倒れた彼女を救助するよりも先に、助手にその非劇的な瞬間を撮影するよう冷酷に命令するのです。この極めて非情な行動は、真実のため、芸術のためと称しながら、人間性を見失っていくパオロの狂気を決定的に示すものとなります。

スタッフ

監督・原案・脚本：パオロ・カヴァラ
製作：ジョルジュ・マルシ
原案：ファビオ・カルピ、ウーゴ・ピロ
脚本：トニーノ・グエッラ、アルベルト・モラヴィア
撮影：マルチェロ・マシオッキ、ラファエル・マシオッキ
音楽：ジャンニ・マルケッティ

関連情報

本作は、衝撃的な映像で知られるモンド映画の系譜に連なる作品としても語られることがあります。

* L'occhio selvaggio - IMDb（英語）

もう一度検索