野田の醤油醸造

野田の醤油醸造

野田市は、千葉県北西部に位置し、江戸時代から醤油醸造で発展した地域です。その歴史は古く、永禄年間に飯田市郎兵衛が甲斐武田氏に溜醤油を納めたのが始まりとされています。

野田醤油の歴史

江戸時代初期: 1661年に髙梨兵左衛門が、翌年には茂木佐平治がそれぞれ醤油と味噌の製造を開始しました。
江戸時代中期: 1704年に甲田三郎兵衛、1775年には杉崎市郎兵衛、大塚弥五衛、竹本五郎兵衛、甲田治郎兵衛らが醤油醸造に参入し、地域全体で醤油作りが盛んになります。
野田醤油仲間の結成: 1781年、高梨兵左衛門、櫛形屋茂木七左衛門、柏屋茂木七郎右衛門、亀屋飯田市郎兵衛、杉崎市郎兵衛、竹本五郎兵衛、大塚弥五兵衛の7家が「野田醤油仲間」を結成し、後の野田醤油の基礎を築きました。
江戸の発展と共に拡大: 江戸の人口増加と利根川水運の発達により、野田の醤油醸造は急速に拡大。1800年代中頃には、髙梨兵左衛門家と茂木佐平治家の醤油が「幕府御用醬油」に指定されるほど品質が向上しました。
明治時代以降: 1887年に「野田醤油醸造組合」が結成され、1917年には茂木・髙梨一族の8家が合同で「野田醤油株式会社」を設立。これが現在のキッコーマン株式会社へと発展しました。ただし、キノエネ醤油は合同に参加せず、現在も独立した事業者として存続しています。

御用蔵醤油

キッコーマンの「亀甲萬御用蔵醤油」は、1939年から宮内庁に納められている御用達品です。国産丸大豆と小麦を使い、木桶で一年間じっくりと熟成させた天然醸造醤油で、手作りに近い少量生産で作られています。これは「キッコーマン特選丸大豆しょうゆ」の原点とも言える逸品です。

醤油藩の城下町

作家の大宅壮一は、野田を「醤油藩の城下町」と呼びました。戦災を免れた野田には、廻船問屋の邸宅や、醤油で財をなした豪商の邸宅が数多く残っています。これらの建物は近代化産業遺産として保存されており、当時の繁栄を今に伝えています。

代表的なものとしては、

上河岸戸邉五右衞門邸
下河岸桝田仁左衛門邸
髙梨兵左衛門邸（国指定名勝）
茂木七左衛門邸（登録有形文化財）
茂木佐平治邸（登録有形文化財）

などが挙げられます。

醤油醸造家たち

野田の醤油醸造を支えた主な家系は以下の通りです。

飯田市郎兵衛家
杉崎市郎兵衛家
竹本五郎兵衛家
大塚弥五兵衛家
高梨一族
茂木一族
堀切紋次郎家
濱口吉右衛門家
吉田甚左衛門家
正田文右衛門家
山下平兵衛家
秋元三左衛門家
甲田三郎兵衛家
河野権兵衛家

これらの家々が、長年にわたり野田の醤油醸造を支え、発展させてきました。

野田醤油関連文化財

野田市には、醤油醸造に関連する多くの文化財が残っています。

近代化産業遺産

野田市の醸造関連遺産
髙梨氏庭園
茂木本家前景観
旧茂木佐平治邸
御用蔵、煉瓦蔵
キノエネ醤油工場群
下河岸、上河岸

登録有形文化財

興風会館
野田商誘銀行
茂木七左衛門邸
茂木佐平治邸
茂木七郎右衛門邸

名勝

髙梨氏庭園
髙梨本家前けやき並木

海外展開

野田の醤油は、早くから海外への輸出も行われていました。第二次世界大戦後一時途絶えましたが、1949年に輸出が再開され、アメリカ、台湾、中国など、世界各地で事業を展開しています。

野田市は、日本の醤油醸造の歴史を語る上で欠かせない場所であり、その伝統は今も息づいています。

もう一度検索