金井清志

金井清志：政治家から実業家へ、地域発展に貢献した生涯

金井清志（かない きよし、1852年9月12日 - 1933年4月18日）は、明治から昭和初期にかけて活躍した日本の政治家にして実業家です。長野県松本市に生まれ、その生涯は政治と経済の両面で、地元の発展に大きく貢献した足跡を残しています。

政治家としての歩み：

若くして梓村の副戸長に任命された金井は、明治13年（1880年）に長野県会議員に当選。常置委員を務めたのち、副議長に就任し、県内7路線の道路開削工事を推進するなど、県政の中枢を担いました。その後、下伊那郡長、上伊那郡長と要職を歴任。特に下伊那郡長在任中の飯田事件では、その手腕を発揮し、暴動の未然防止に成功しました。上伊那郡長時代には、郡役所と警察署の新築を成し遂げるなど、行政手腕にも定評がありました。地方行政における経験は、のちの実業家としての活動にも繋がる重要な礎となりました。明治25年（1892年）には衆議院議員に当選し、国政にも携わっています。

実業界への転身と地域開発：

明治33年（1900年）以降は、実業界へと進出。上伊那銀行と梓商業銀行を設立し、頭取として銀行経営に手腕を発揮しました。その経済的基盤は、地域社会の発展に大きく貢献しました。さらに、明治40年（1907年）には伊那電気軌道の創設に尽力し、取締役として伊那谷の鉄道敷設に貢献。この伊那電気軌道は、後の飯田線として発展し、地域間の交通を大きく改善しました。これらの活動は、単なる経済活動にとどまらず、地域住民の生活向上に直結するものでした。

功績とその後：

金井清志の功績は、政治と経済の両面から地元の発展に貢献した点にあります。地方行政における経験と、実業界での成功は、互いに補完しあい、地域社会に大きな影響を与えました。昭和8年（1933年）に82歳で亡くなると、その功績を称え、昭和11年（1936年）には上伊那郡町村長会をはじめ多くの人々の発起により、伊那市の常円寺境内（丸山公園）に胸像が建立されました。これは、地域住民にとって金井清志がいかに重要な人物であったかを示す証左と言えるでしょう。金井清志の生涯は、近代日本の地方発展における政治家と実業家の役割を示す、貴重な事例となっています。彼の功績は、現在もなお、地元の人々の記憶に深く刻まれています。

参考文献：

成瀬麟、土屋周太郎編『大日本人物誌 : 一名・現代人名辞書』八紘社、1913年
『信濃人物誌』1965年
宝月圭吾編 『長野県風土記』 旺文社、1986年
『長野県歴史人物大事典』 郷土出版社、1989年
* 衆議院・参議院『議会制度百年史 - 衆議院議員名鑑』大蔵省印刷局、1990年

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