金剛證寺

金剛證寺（こんごうしょうじ）

金剛證寺は、三重県伊勢市朝熊町岳に位置する臨済宗南禅寺派の寺院です。勝峰山と号し、兜率院とも呼ばれます。本尊は虚空蔵菩薩で、朝熊山の南峰東腹にあります。寺全体が「朝熊山」と呼ばれることもあります。

歴史

創建は6世紀半ば、欽明天皇が僧・暁台に命じて明星堂を建てたのが始まりとされますが、詳細は不明です。平安時代の天長2年（825年）に空海が真言密教の道場として中興したと伝えられています。その際、空海は本尊として福威知満虚空蔵菩薩を祀り、寺名を勝峰山兜率院金剛證寺とし、虚空蔵求聞持法を修したとされています。

その後、寺は一時衰退しましたが、14世紀末に仏地禅師東岳文昱が再興に尽力し、真言宗から臨済宗に改宗しました。神仏習合の時代には、伊勢神宮の鬼門を守る寺として伊勢信仰と結びつき、「伊勢へ参らば朝熊を駆けよ」と言われるほど、伊勢国・志摩国最大の寺となりました。

虚空蔵菩薩の眷属である雨宝童子が祀られており、雨宝童子は伊勢神宮内宮の祭神である天照大御神の化現と考えられていたため、伊勢神宮の奥の院とも呼ばれました。そのため、仏事に榊が供えられるという珍しい風習があります。

関ヶ原の戦いの後、九鬼嘉隆ゆかりの寺となり、嘉隆の三男有慶は嘉隆の菩提を弔うために当寺にて出家し、金剛證寺第12世となりました。江戸時代には幕府の援助を受け、慶長14年（1609年）には徳川家康の命により、池田輝政が本堂・摩尼殿を再建しました。この本堂は現存し、重要文化財に指定されています。

明治時代には、他の神宮寺が廃寺となる中で、当寺は伊勢神宮の奥の院として存続しました。しかし、1887年（明治20年）に再び火災にあい、多くの堂宇を失っています。

1925年（大正14年）にケーブルカーが開通し、昭和には登山バスが運行されるなど多くの人が訪れましたが、太平洋戦争中にケーブルカーが廃線となり、衰退しました。戦後、伊勢湾台風などで被害を受けましたが、1964年（昭和39年）の伊勢志摩スカイライン開通後には参拝客が再び増加し、復興を遂げています。

信仰対象としての朝熊山

平安時代末期には埋経信仰があり、経筒などが発見されています。これらの出土品は国宝に指定され、経塚は国の史跡に指定されています。江戸時代以降には、葬儀後に朝熊山に登り、金剛證寺奥の院に塔婆を立てて供養する風習がありました。

境内

境内には、重要文化財である本堂をはじめ、明星堂、五重石塔、三重銅塔、矢負地蔵堂などがあります。連間の池には連珠橋が架かり、比岸と彼岸を表わしています。また、雨宝堂には重要文化財の雨宝童子尊が祀られています。

その他、仁王門、開山堂、十三重石塔、書院、庫裏、おちんこ地蔵堂、極楽橋（伊勢市指定有形文化財）、宝物館、山門、八大龍王社、奥之院などがあります。

文化財

国宝：伊勢国朝熊山経ヶ峯経塚出土品 一括
重要文化財：金剛證寺本堂 附：厨子、紙本著色九鬼嘉隆像、木造雨宝童子立像、木造地蔵菩薩立像、銅造双鳳鑑、太刀（伝吉包） 附：黒漆太刀拵
国指定史跡：朝熊山経塚群
伊勢市指定有形文化財: 極楽橋

アクセス

自動車：近鉄鳥羽線 朝熊駅より車で約30分。伊勢自動車道「伊勢西IC」から伊勢志摩スカイラインを車で約20分。
バス：三重交通「参宮バス」（土日祝日、8月13日～8月15日、12月30日～1月4日のみ運行） で浦田町バス停から約20分。

金剛證寺は、豊かな自然と歴史に彩られた、伊勢を代表する寺院の一つです。

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