金城武の樹

金城武の樹

台湾東部、台東県池上郷の伯朗大道に佇む一本の木、それが「金城武の樹」です。正式にはアカギという種類の木で、地元では茄苳樹と呼ばれています。この木は、エバー航空のCMに登場したことで一躍有名になり、多くの観光客が訪れる人気スポットとなりました。

概要

金城武の樹は、池上郷の主要道路である台湾省道台9線から分岐する伯朗大道沿いにあります。2013年、エバー航空のCMで俳優の金城武がこの木の下でお茶を飲むシーンが放映されると、その美しい風景は瞬く間にインターネット上で話題となりました。人々はこの木を「金城武の樹」と呼び、伯朗大道の象徴的な存在として認識するようになりました。

この木は観光客を魅了し、年間約5億台湾ドルもの経済効果をもたらしましたが、同時に観光客によるゴミの散乱や農作物の踏み荒らしといった問題も引き起こしました。地元農家は、木の切除を検討するほど環境悪化に悩まされていた時期もありました。

2014年7月には、台風によって木が倒れてしまうという悲劇に見舞われましたが、エバー航空と台東県政府の協力のもと、日本の樹医による治療が行われ、無事に元の姿を取り戻しました。しかし、観光客のマナー問題は依然として解決しておらず、木の移転を求める声も上がっています。

沿革

この木が植えられたのは1970年代のことです。当時、池上郷の住民が農地の傍らに植え、家畜の乳搾りの準備や休憩場所として利用していました。それから数十年後、2013年にエバー航空のCMに登場したことで、この木は運命的な転機を迎えます。

2013年

6月、エバー航空のCMが公開され、金城武が木の下でお茶を飲むシーンが話題となり、「金城武の樹」や「奉茶樹」と呼ばれるようになりました。
8月には、エバー航空が休日にこの木の下で客室乗務員によるお茶の提供を開始しました。

2014年

7月23日、台風により木が倒伏。2日後、池上郷公所とエバー航空が日本の樹医に治療を要請しました。
日本の樹医2名が現地を訪れ、治療後、木は元の場所に再植樹されました。
11月、観光客向けに木の下にCMを連想させるヤカンのオブジェが設置されました。

2015年

11月27日、日本の樹医による4度目の往診が行われ、木の回復が確認されました。

2016年

夏と秋に、2年間の回復状況が報道されました。

2017年

12月27日、枝の枯れが確認されたため、日本から樹医が5度目の往診を実施。土壌の乾燥が原因と判明し、セメント除去や土壌入れ替えなどの治療が行われました。

2018年

7月4日、台東県政府主催の「台東で必ず行きたい観光地TOP10」のインターネット投票で、金城武の樹が1位に選ばれました。

各地の金城武樹

池上の金城武の樹が有名になると、他県市でも似た木を「ご当地版金城武の木」としてSNSで共有したり、自治体レベルで観光資源として売り込む事例が相次ぎました。

南投県埔里鎮：樹齢約50年のガジュマルの木が「埔里金城武樹」として話題になりました。
南投県竹山鎮：竹山鎮公所が水田に立つ木を「竹山版金城武樹」として売り出しています。
台中市：南屯区のガジュマル「青榕公」や、烏日区の自生する木を「台中版」として標識設置を検討しています。
宜蘭県蘇澳鎮：南澳渓の河口付近のクスノキが「大南澳版金城武樹」と呼ばれています。

これらの「ご当地版金城武の木」は、オリジナルの木と同様に、地域の観光資源としてのポテンシャルを秘めています。

パロディ

金城武の樹とエバー航空のCMは、様々なパロディも生み出しました。

2014年の中華民国統一地方選挙では、彰化県長候補がCMを再現したプロモーションビデオを制作しました。
* 2019年には、飲料メーカーが金城武を起用したCMで、同様に木の下でお茶を飲むシーンを盛り込みました。

これらのパロディは、金城武の樹が広く認知され、人々に愛されている証拠と言えるでしょう。

まとめ

金城武の樹は、その美しい風景と数奇な運命で多くの人々を魅了してきました。しかし、その人気ゆえに環境問題や観光客のマナー問題も引き起こしており、その保全が課題となっています。今後も、この木が末永く人々に愛され続けるよう、適切な管理と保護が必要不可欠です。

この木は、単なる観光名所ではなく、自然と文化、そして人々の営みが交差する場所として、これからもその存在感を放ち続けるでしょう。

もう一度検索