金大中事件

金大中事件の概要

金大中事件（きんだいちゅうじけん）、または金大中拉致事件（きんだいちゅうらちじけん）は、1973年8月8日に発生した韓国の政治家金大中の拉致事件です。この事件は、後に韓国の大統領となる金大中が、日本の東京都内のホテルで韓国の中央情報部（KCIA）によって拉致され、韓国に連れ去られた事件です。事件は大きな波紋を呼び、韓国の政治や日本との関係に深刻な影響を与えました。

事件の背景

金大中は1971年の大韓民国大統領選挙で新民党の候補として立候補。なだれ込む支持を受けるも、当時の大統領朴正煕にわずか97万票差で敗れました。この競争の結果、朴に強い危機感が生じ、金の生命を狙う暗殺計画が立てられました。実際、金の車がトラックに突っ込まれ、彼とともに運転していた3人が死亡する事故が起こりました。この事件がKCIAによる情報操作の一環であることが後に明らかになりました。

次第に、金は海外での生活を余儀なくされ、国の民主化運動を訴え続けました。その最中、韓国では朴が非常事態宣言を出し、国内での暴圧化が進行し、金は帰国を断念せざるを得ませんでした。

事件の経過

1973年7月、金大中は日本に招待され、講演活動を行っていました。その際、彼は自己保護のためにホテルを日替わりで変更し、安全を図っていました。しかし、事件発生当日、会議後にホテルを出ようとしたところ、数名の男に襲われ、意識を失いました。彼は一時的に地下の車両に押し込まれ、その後、日本を出国する工作船に乗せられました。金は、船に乗せられる際に投げ込まれる危険を感じながらも、最終的には拉致の実行犯たちの手から逃れることができました。

日本の海上保安庁が事件を察知した際、拉致の実行者は金を殺害するのを断念し、最終的にソウルで放置しました。金は5日後、自宅近くのガソリンスタンドで解放されました。

事件後の展開

この事件はKCIAが関与していることが後に警視庁によって公表され、事件の主犯とされた金東雲（駐日韓国大使館の職員）は逃亡しました。その後、日本と韓国の政府間での交渉は続きつつも、韓国政府はこの事件の責任を一切認めることはありませんでした。

また、文世光事件や朴正煕の暗殺事件など、後の重大な事件にも影響を与えました。特に金大中事件を契機に、韓国国内での反朴感情が高まり、ついには朴政権が終焉を迎える原因にもなりました。

日韓関係への影響

日本政府はこの事件が主権侵害であるとして公式な謝罪を求めましたが、当時の韓国政府はこれを否定し、状況は悪化しました。その後、金大中が大統領になると、この事件に関する調査や賠償請求を完全に無視する方針を取ることになりました。

2006年には、韓国政府が事件にKCIAが関与していたことを初めて認め、謝罪を行いました。しかし、公式な謝罪は今なお行われないまま、日韓の関係にしこりを残しています。

結論

金大中事件は、韓国の民主化の過程や日韓の外交関係において非常に重要かつ危険な事件として位置づけられています。後の政治動向や国際関係に大きな影響を与えたこの事件は、多くの人々にとって歴史の教訓となっています。

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