新民党

韓国新民党：保守野党の興亡と激動の時代

韓国第三共和国、そして第四共和国において、最大野党として君臨した新民党。その歴史は、朴正熙政権下の激しい政治闘争と、党内抗争の連続でした。本稿では、新民党の創設から全斗煥による軍事クーデター後の解散まで、その軌跡を詳細にたどります。

創設と朴正熙政権への挑戦： 1967年、朴正熙政権に対抗すべく、民衆党や新韓党といった既存の保守系野党勢力が集結して新民党が誕生しました。翌年の大統領選挙では尹潽善を擁立するも、旧党派間の連携不足が響き、朴正熙の大勝を許しました。その後、1969年の3選改憲では、改憲に賛成した党員3名の除名という強硬策に出るなど、改憲反対を鮮明に打ち出しました。1971年の大統領選挙では金大中を擁立し、朴正熙政権に善戦するも勝利には至りませんでした。

党内抗争と分裂： 1972年の第8代総選挙では、「珍山波動」と呼ばれる激震が党内を揺るがします。これは選挙結果をめぐる解釈の相違から生じたもので、珍山派（主流派）と反珍山派（反主流派）の対立が激化。ついには別々の党大会を開催する事態にまで発展し、反珍山派の一部は民主統一党を結成して離党しました。

金泳三の台頭と強硬路線： 1974年、柳珍山総裁の急逝を受け、金泳三が新民党総裁に選出されました。柳珍山が与党との妥協路線を志向したのに対し、金泳三は民主回復と憲法改正を訴え、政府・与党に真っ向から対決姿勢を示しました。しかし、この強硬路線は党内を再び分裂させ、金泳三派と反金泳三派の対立が激化。1976年の党大会では、金泳三は総裁の座を追われる結果となりました。

民主共和党との接戦と終焉： 1978年の第10代総選挙では、新民党は与党の民主共和党をわずかながらも上回る得票率を記録し、政権への批判の高まりを示しました。翌年には金泳三が再び総裁に返り咲き、新民党は反軍政の姿勢を鮮明化させます。しかし、1979年の全斗煥による5・17クーデターによって政治活動を禁止され、1980年、第五共和国憲法附則により正式に解散を余儀なくされました。翌年には、金泳三や金大中らを除く穏健派の一部が、民主韓国党に参加しました。

新民党の遺産： 新民党は、その存在期間において、朴正熙政権、そしてその後継政権に対する強力な批判勢力として機能しました。党内抗争の激しさは、韓国の民主化運動における複雑な政治状況を反映しており、その歴史は現代韓国政治史を理解する上で重要な要素となります。金泳三や金大中といった後の韓国大統領を輩出したことからも、その影響は計り知れません。新民党の興亡は、韓国民主主義の歩みにおいて、決して無視できない重要な一頁です。

主要人物：

兪鎮午（ユ・ジンオ）：結党時の総裁
金泳三（キム・ヨンサム）：新民党総裁、後の韓国大統領
金大中（キム・デジュン）：新民党大統領候補、後の韓国大統領
柳珍山（ユ・ジンサン）：新民党総裁

参考文献：

青柳純一『韓国現代史』社会評論社
韓国史編纂委員会　金容権編著『朝鮮韓国近現代史事典』日本評論社
尹景徹『分断後の韓国政治：一九四五〜一九八六年』木鐸社
大韓民国中央選挙管理委員会編『大韓民國政黨史1輯（1948年5月10日～1972年10月16日）』（中央選擧管理委員會）

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