金奎植

金奎植：韓国の独立と統一を目指した生涯

金奎植（1881年-1950年）は、韓国の独立運動家、政治家、そして教育者として知られる重要な人物です。幼くして両親を亡くした彼は、孤児院で育ち、西洋の学問に触れる機会を得ました。その後、アメリカに留学し、プリンストン大学で修士号を取得。博士課程への進学も決まっていましたが、祖国独立のために帰国するという決断をしました。

帰国後は、YMCAで働きながら教育にも携わり、独立運動にも深く関わっていきます。1910年の日本による韓国併合後、中国に亡命。呂運亨や申圭植らと共に独立運動を展開し、上海で新韓青年党を結成しました。パリ講和会議への出席を目指しましたが、正式な政府代表としての参加は認められませんでした。

1919年3月の三・一運動後、上海で成立した大韓民国臨時政府において、金奎植は重要な役割を担います。外務総長や欧米委員部委員長などを歴任し、独立運動の資金調達や国際的な支持獲得に尽力しました。しかし、講和会議での成果は得られず、その後も臨時政府内部の混乱やソ連からの支援打ち切りなど、数々の困難に直面することになります。

様々な活動を経て、金奎植は臨時政府の副大統領にまで昇進。終始一貫して、朝鮮の独立と統一を訴え続けました。1945年の日本の敗戦と朝鮮の解放後、彼は帰国しますが、左右両派の対立が激化する中で、朝鮮の統一を目指した左右合作運動にも積極的に関わりました。しかし、この運動は挫折し、朝鮮は南北に分裂してしまいます。

晩年、金奎植は民族自主連盟を結成し、南北の統一と独立を目指して活動を続けました。しかし、朝鮮戦争が始まると、彼は北朝鮮へ渡り、そこで亡くなったとされています。彼の死後、韓国政府は彼の功績を認め、建国勲章を贈りました。

金奎植の生涯は、激動の時代を駆け抜けた韓国の独立運動家の典型例と言えるでしょう。彼は、西洋の学問とキリスト教の精神を背景に、常に祖国の独立と統一を念頭に置き、様々な活動を行いました。彼の活動は、今日の韓国の民主主義と独立に大きな影響を与えたと考えられます。しかし、彼の北朝鮮への渡航については、いまだに様々な憶測が飛び交っており、その真相解明は今後の課題と言えるでしょう。

金奎植の主な経歴

1881年：慶尚道東萊府（現在の釜山広域市）に生まれる
1904年：プリンストン大学で修士号を取得
1913年：中国に亡命
1919年：大韓民国臨時政府の外務総長、欧米委員部委員長に就任
1920年：大韓民国臨時政府の学務総長に就任
1934年：大韓民国臨時政府の国務委員に就任
1940年：大韓民国臨時政府の副大統領に就任
1945年：帰国
1950年：北朝鮮で死去
1989年：韓国建国勲章受章

参考文献

『朝鮮を知る事典』（平凡社、1986年）
姜在彦『新訂　朝鮮近代史』（平凡社、1994年）

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