金子健造 (コスモス短歌会)

金子 健造

かねこ けんぞう。
昭和期に活動した日本の歌人。1915年（大正4年）9月8日に生まれ、1988年（昭和63年）7月14日に亡くなった。なお、「福岡市歌」の作詞者として知られる同姓同名の金子健造（1905-1992）は別人であり、混同しないよう留意が必要である。

生涯

金子健造は、1915年（大正4年）、山梨県中巨摩郡明穂村（現在の南アルプス市）にて、農業を営んでいた相原家の次男として生を受けた。地元の山梨県立農林学校で学びを修めた後、1935年（昭和10年）に横須賀海兵団に入隊し、海軍軍人としての道を歩み始める。海軍砲術学校の普通科を卒業している。

1937年（昭和12年）に日中戦争（日支事変）が開戦すると、彼の境遇は大きく変化する。戦時体制への移行に伴い、当初予定されていた兵役期間の満了による除隊が不可能となり、軍務を継続することとなった。戦艦「長門」や「山城」への乗務を経て、上海陸戦隊、南方の部隊、さらに横須賀鎮守府特別陸戦隊など、各地の部隊に配属され、激動の時代を軍人として過ごした。

厳しい軍務の中で、金子健造は短歌に救いを求めた。1939年（昭和14年）、彼は北原白秋が主宰する歌誌『多磨』への投稿を開始する。白秋の指導を受けながら、過酷な環境下でも創作活動を続けた。

1940年（昭和15年）には海軍砲術学校高等科を修了。軍歴を重ねる一方、歌人としても歩みを進めた。1942年（昭和17年）にはミッドウェー海戦より帰還し、横須賀にある海軍砲術学校の教員に着任した。

1943年（昭和18年）、当時の戦況を反映した歌集『大東亜戦争歌集 愛国編』に彼の歌が採録され、歌人としての名を知られるようになる。同年、金子静子氏と結婚し、婿養子として金子の姓を名乗るようになった。公私両面で大きな転機を迎えた年である。

第二次世界大戦の終戦は、厚木砲台長として迎えた。軍務を終えた後は、新たな生活を模索する。一時期は海産物を行商して生計を立てるなど、戦後の混乱期を乗り越えようと奮闘した。

1949年（昭和24年）からは、アメリカ軍の横須賀海軍施設に勤務するようになる。安定した職を得たことで、再び短歌への情熱を燃やすことができる環境が整った。

所属していた歌誌『多磨』が1952年（昭和27年）に休刊した後、金子健造は宮柊二が創設したコスモス短歌会に入会したが、しばらくの間、活動を休止していた。

1976年（昭和51年）に長年勤めた横須賀海軍施設を退職すると、翌1977年（昭和52年）7月、コスモス短歌会へ本格的に復帰する。退職後は創作に専念し、精力的に作品を生み出した。その活動が認められ、1986年（昭和61年）1月にはO先生賞を受賞し、歌人としての地位を確立した。

1988年（昭和63年）7月14日、直腸癌により逝去。享年74歳（満72歳没）であった。彼の死後、妻である金子静子氏が夫の遺した歌を編纂し、遺稿集として刊行した。この遺稿集によって、金子健造の生涯と歌は後世に伝えられている。

主な著作

* 金子静子 編『氷雪の旅 金子健造遺歌集』（伊麻書房、1990年）全国書誌番号:91041245

もう一度検索