金子彦太郎

金子彦太郎は、1883年（明治16年）12月15日に静岡県富士郡今泉村（現在の富士市）で生まれ、1963年（昭和38年）12月4日に生涯を閉じました。彼は、地方政治家として、また衆議院議員として、激動の昭和時代に重要な役割を果たしました。

金子彦太郎は、地元の名士である金子利七の長男として生を受けました。小学校を卒業後、静岡中学校（現在の静岡高等学校）に進学し、野球部に所属するなど、文武両道に励みました。1905年（明治38年）には札幌農学校（現在の北海道大学）林学科を卒業し、専門知識を身につけました。卒業後、1906年（明治39年）9月には陸軍に入隊し、砲兵少尉に任官されました。1910年（明治43年）に除隊し、故郷に戻りました。

政治家としてのキャリアは、1921年（大正10年）に今泉村会議員に当選したことから始まりました。その後、5期にわたり議員を務め、その手腕を認められて村助役を2期務めました。1935年（昭和10年）には今泉村長に就任し、1942年（昭和17年）に吉原町との合併に至るまで、村政を担いました。また、1927年（昭和2年）10月からは静岡県会議員としても活躍し、4期にわたってその任を果たしました。県会議員時代には、議長も務め、県政にも大きな影響力を持っていました。

さらに、金子彦太郎は、郡農会長、茶業組合長、養蚕業組合長など、地域経済を支える様々な役職を歴任しました。県農会名誉幹事、県茶業組合連合会議所理事、県養蚕業組合連合会長、県土地改良協会会長、県河川海岸協会会長など、その活動は多岐にわたり、地域社会の発展に貢献しました。

1942年（昭和17年）4月には、第21回衆議院議員総選挙において、静岡県第2区から翼賛政治体制協議会の推薦を受け、衆議院議員に当選しました。議員としては、翼賛会政調文部、農林兼務委員を務め、国家のために尽力しました。しかし、第二次世界大戦終戦後、公職追放の対象となり、政治活動を一時的に制限されました。

追放解除後の1952年（昭和27年）には、吉原市長に当選し、政治の世界に復帰しました。市長として3期を務めましたが、在任中に急逝しました。彼は特に治山治水事業に力を入れ、内山財産を活用した2400ヘクタールの植林造成に尽力しました。これにより、地域の環境保全と災害対策に大きく貢献しました。

金子彦太郎の功績は、その死後も称えられ、1963年（昭和38年）には正五位が追贈され、勲四等旭日小綬章が贈られました。また、富士市からは名誉市民の称号が贈られ、その偉大な足跡は、現在も語り継がれています。

彼は、地方自治の発展、地域経済の活性化、そして環境保全に力を尽くした政治家として、その名を歴史に刻みました。金子彦太郎の生涯は、地方政治と国家政治の両面で貢献した人物として、後世に大きな教訓を与えています。

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